2009 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞の転移を制御する内因性リガンドと病原体センサーの役割
Project Area | Homeostatic inflammation: Molecular basis and dysregulation |
Project/Area Number |
21117008
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
丸 義朗 Tokyo Women's Medical University, 医学部, 教授 (00251447)
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Keywords | 炎症 / 癌 / 転移 / TLR / ケモカイン / 増殖因子 |
Research Abstract |
癌が転移を起こす前に、将来転移する予定になっている臓器で遺伝子変化を解析し、肺を例にとって転移前微小環境形成に関与するケモカインS100A8とSAA3を同定した。これらの受容体がTLR4であることも証明した。VEGFやTNFなどの原発癌由来増殖因子による内分泌刺激によってS100A8は血管内皮細胞とマクロファージで、SAA3は肺においてS100A8による傍分泌刺激によって血管内皮細胞とマクロファージで、SAA3は肺上皮細胞において自己分泌刺激によって、さらにSAA3は肺上皮細胞とマクロファージに対して傍分泌刺激によって、それぞれ発現を亢進させることを明らかにした。TLR4を発現する免疫担当細胞が骨髄から肺に動員されることから、このネットワークはこれら傍分泌系によって増幅されるだけでなく、当初原発巣に依存していたTNFによる刺激は不必要になり転移微小環境は独立性を強めていくことになる。以上の論理を白血球が病原体の存在する感染巣に動員される機構に準えて考察し、古くから提案されているDanger signalをも包括する自然炎症という概念で転移前微小環境を説明した。すなわち、病原体による組織破壊、また組織自然免疫機構による病原体の殺傷などはTLR4の外来性リガンドであるエンドトキシンの発生に起因し、免疫担当細胞の動員を誘発する。これに対して、癌が転移する前に内因性リガンドであるS100A8やSAA3が発現上昇すれば、生体は外来微生物の襲来と誤認し、同様の細胞移動を招く。TLR4が癌細胞に発現していれば、この機構によって癌細胞そのものも動員されることになり、これが転移巣で再度増殖すれば転移が成立する。このような自然炎症説を多くの諸外国の学会で招待講演し、また総説を執筆することで広めることに努めた。
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Research Products
(7 results)