2011 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞の転移を制御する内因性リガンドと病原体センサーの役割
Project Area | Homeostatic inflammation: Molecular basis and dysregulation |
Project/Area Number |
21117008
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
丸 義朗 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (00251447)
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Keywords | TLR4 / 自然免疫 / S100A8 / SAA3 / 炎症 / がん転移 / 内因性リガンド |
Research Abstract |
下記の2つの到達目標からなる。 1)転移を自然炎症から見た臓器特異性の問題。肺転移モデルにおいて、TLR4の内因性リガンドであるS100A8およびSAA3の発現を肺における種種の細胞で検討した結果、肺特異的に在住するクララ細胞でSAA3の自己増幅が起こっていることを見出した。肺胞上皮細胞、マクロファージ、血管内皮細胞、それぞれにおいて、TNF,S100A,SAA3の誘導性発現パターンの詳細を明らかにした。肺の気道感染において、LPSで代表される刺激によってこれらの細胞でおこる傍分泌カスケードと同じものが肺転移でも発生していた。微生物の侵入が低レベルであるほどホメオスターシスに近い。このメカニズム、すなわち生理的レベルの炎症の仕組みの破綻がこの肺転移モデルの機序であると結論した。 2)TLR4の蛋白質内因性リガンドはほんとうに存在するか否かの問題。多くの研究がリガンド候補の蛋白質を大腸菌で発現させ精製し、そのLPS濃度を一定の方法で測定して使用している。そこでLPSの混在を論理的に完全に排除するため、哺乳類細胞で発現させ精製した。また試験管内で化学合成した。 この2つの方法によって得られたリガンドを、TLR4との物理的結合、TLR4依存性の生物学的系にかけて、その活性を検討した。その結果、両者の方法によって得られたS100A8、SAA3でも活性があることがわかった。ペプタイドのTLR4内因性リガンドは存在すると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、転移が炎症により、臓器特異性は転移臓器の炎症に関与する臓器特異的細胞によることを、少なくとも一つの転移モデルで証明したので。 SAA3,S100A8のconditionalノックアウトマウスはいまだ作成の途上にあり、遅れている。しかし、総括班の支援を得て早急に完成させる予定である。本マウスの存在は個体レベルの炎症とホメオスターシスに関与することを証明する上で不可欠である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)S100A8,SAA3のconditionalノックアウトマウス作成を完成させ、転移における内因性リガンドの意義を自然炎症の立場から証明する。2)ペプチドと精製したTLR4-MD2複合体の共同結晶構造解析を分担研究者、総括班と協力して完成させる。
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Research Products
(10 results)