2012 Fiscal Year Annual Research Report
Economic analysis of income inequality and poverty
Project Area | Elucidation of social stratification mechanism and control over health inequality in contemporary Japan: New interdisciplinary area of social and health sciences |
Project/Area Number |
21119004
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 彩 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 部長 (60415817)
浦川 邦夫 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (90452482)
大石 亜希子 千葉大学, 法経学部, 教授 (20415821)
鈴木 亘 学習院大学, 経済学部, 教授 (80324854)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 所得格差 / 貧困 / 子ども / 幸福 / 生活保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画班は、所得格差の拡大傾向や貧困リスクの高まりの動学的なメカニズムを解明するとともに、所得格差や貧困が子育てや介護、子どもの健康、就業行動、主観的な幸福度や健康意識に及ぼす影響を、多目的共用パネル調査「まちと家族の健康調査」やその他調査の利用、ほかの計画班との連携を通じて検討することを目的としている。平成24年度においては、主として以下のような研究成果が得られた。①「まちと家族の健康調査」の個票データにもとづき、成人の受診抑制について初期的分析を行った結果、経済的理由による受診抑制は、世帯所得および就業状況、年齢の影響を受けることを確認した。②「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2011」を用いて、10代母親に産まれた子の状況を分析し、若年出産が低学歴、無配偶となるリスクに大きい影響を与え、それが低所得となるリスクを高める不利の経路を確認した。③近年の生活保護率の上昇について、長期時系列データによる要因分解を行い、1996年3月以降の生活保護率の上昇は一時的要因よりも恒常的要因で説明される割合が大きいことを示した。④「まちと家族の健康調査」を用いて、子供時代に親から受けた虐待やネグレクト、学校でのいじめ経験が、成年期の幸福度や主観的健康感に及ぼす長期的な影響を確認した。⑤「地域の生活環境と幸福感に関するアンケート」に基づき、治安の悪さなど地域に対する主観的な評価と主観的健康感との相関関係について、パーソナリティやSOC(首尾一貫意識)を統御しても両者の関係がある程度存在することを確認した。さらに、⑥大規模な世帯向けアンケート調査、企業経営者向けアンケート調査をもとに日本の地域間格差の実態について幅広く分析し、地域間格差が地域住民の健康に与える効果を分析した国内外の先行研究を幅広くサーベイした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の中間評価においては、①パネル調査(「まちと家族の健康調査」等)の活用を期待する、②研究課題として新設した生活保護について、受給層における稼働能力層の急増についての研究成果を出してほしい、③ほかの計画班との連携を強め、新規に収集したデータや医学的なデータを活用した研究を期待するという指摘を受けた。 平成24年度においてはこうした指摘を特に意識して研究を進めてきた。とりわけ、①③については、小塩が「まちと家族の健康調査」を用いて、ほかの計画班(A01班)に所属する医学・公衆衛生の研究者との共同研究を進め、その成果は国際学術雑誌に受理・掲載された。②についても、鈴木がそのテーマを直接扱った分析を行い、その成果は国内の査読雑誌に受理・掲載された。こうした研究を含め、平成24年度は10本の査読付論文が公表されている。 以上のような学術成果の公表に加えて、定例研究交流会シンポジウムへの参加・報告など、ほかの計画班の研究者との共同研究を積極的に展開した。さらに、貧困問題を中心として各種審議会への参加や講演会など、社会貢献活動を精力的に行ったことも平成24年度の特徴である。とりわけ、阿部は国家戦略会議「幸福のフロンティア部会」の部会長、社会保障審議会生活保護基準部会の委員として、本研究の成果を政府の政策提言につなげた。
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Strategy for Future Research Activity |
本新学術領域研究の最終年度に当たる平成25年度においては、これまでの研究で得られた知見を踏まえ、本新学術領域研究に参加するその他の計画班と連携しつつ、研究をさらに進める。 具体的な研究内容としては、次の4点を主要なテーマとする。①医療サービスの受診抑制を、その理由別に区分して発生状況等を明かにし、子どもの置かれている社会経済状況と子どもの健康との関係について知見を深める。②母親の就業が、子どもの健康や発達に関連するとみられる指標にどのような違いを生んでいるかを分析し、海外での研究結果と比較する。また、児童扶養手当や養育費徴収が母子世帯の貧困削減にもたらす効果をシミュレーションする。③人々のFunctionings(達成された機能の束)やCapability(達成しうる機能の集合、潜在能力)の生成要因に着目し、それらが主観的厚生や格差・貧困にどのように関連しているかを分析する。④初職(大学や高校卒業後に初めて就く職業)や職場における社会関係資本が労働者の精神健康に及ぼす影響を分析する。 これらの分析に際しては、本新学術領域研究で利用可能となっている2つの大規模調査の結果を最大限活用する。さらに、各研究によって得られた知見に基づき、平成25年8月31日~9月1日に開催される国際シンポジウムの運営に当たるほか、理論構築や政策提言に関するほかの計画班との共同研究に参加し、5年間の研究成果をまとめる。
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Research Products
(25 results)