2009 Fiscal Year Annual Research Report
多時間スケールダイナミクスによるメタルール生成とそれに基づく学習、進化の理論
Project Area | The study on the neural dynamics for understanding communication in terms of complex hetero systems |
Project/Area Number |
21120004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 邦彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30177513)
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Keywords | 力学系 / カオス的遍歴 / 可塑性 / 学習 / 進化 |
Research Abstract |
時間スケールの異なる結合系の研究をすすめるとともに、それをふまえて、力学系のルールを変えるシステムとしての学習、記憶、適応、進化の研究をすすめた。 具体的な結果は以下のとおりである。 (1)入出力関係を適応度とした、結合力学系の進化過程:ルールによって系の時間発展(力学系)が与えられるとし、その発展結果の状態から機能が決まるとする。その機能に応じて適応度を定め高い機能をうむ力学系を遺伝アルゴリズムにより選択し、そのような力学系の特性を調べた。特に、各遺伝子の発現のゆらぎを、力学系でのノイズによるものVipと遺伝的変異によるものVgに分けて求めると、その両者が多くの遺伝子にわたって比例していることを見出した。速いスケールの揺らぎVipと遅いスケールでの揺らぎVgが結びつく結果であり、これはノイズに対して安定性を持つ力学系の特性であり、またその理由を説明した。さらに、環境が変動する際に、ノイズが適度な大きさを持つと、外界への適応性と進化的な安定性を両立させられることを示した。 (2)フロー構造としての記憶:異なる時間スケールを持つ素子が層状の神経力学系を考え、そのシナプスが、入出力関係を学習するようにHebbおよびanti-Hebb機構によって変化するとする。その結果、フィードフォワード及びフィードバックのシナプス変化の時間スケールが適切な関係をみたすと、神経数に比例した記憶容量を持ちうることを示した。このように入出力関係を学習した際に、神経系のダイナミクスがいかに入力に応じて分岐するかを解析した。特に、入力がない時に、記憶に対応した出力をめぐる自発的神経活動が生成されることを見出した。これは近年の実験とも対応する成果である。 (3)このほか、可塑性を持つような結合力学系のデザイン、異なる時間スケールを持つ大自由度力学系での適応過程の研究を進めた。
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Research Products
(9 results)