2010 Fiscal Year Annual Research Report
多時間スケールダイナミクスによるメタルール生成とそれに基づく学習、進化の理論
Project Area | The study on the neural dynamics for understanding communication in terms of complex hetero systems |
Project/Area Number |
21120004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 邦彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (30177513)
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Keywords | 力学系 / カオス的遍歴 / 可塑性 / 学習 / 進化 |
Research Abstract |
生命システムは、自らの発展を規定する規則がそのシステムの中から生成されてくる。例えば発生の規則は進化により定まり、認知活動の発展規則は学習により決まる。その一方で進化は発生の結果であり、学習は神経活動に依存する。そこで、速いスケールで生じる時間発展とゆっくりしたスケールで起こる規則の変化は相互に関係してくる。この両者の関係から生命システムの適応、発生、進化の持つ普遍的性質を調べて、それにより生命システムの可塑性をゆらぎとダイナミクスの視点から表現することを試みた。一方で、カオス的遍歴や集団運動をと生命システムの持つ可塑性との関係を探った。 主要な結果は以下の通りである。 1.揺らぎで見た、進化と発生をつなぐ関係の定式化:力学系の発展結果の状態から適応度を定め、高い適応度をうむ力学系を進化させそのような力学系の特性を調べた。特に、状態変数のゆらぎを、力学系でのノイズによるものVipと遺伝的変異によるものVgに分けて求める、その両者が多くの変数にわたって比例していることを見出した。これはノイズに対して安定性を持つ力学系の特性であり、またその理由を説明した。さらに、環境が変動する際に、ノイズが適度な大きさを持つと、外界への適応性と進化的な安定性が両立させられることを示した。 2.入出力関係の学習、記憶と自発活動:層状の神経力学系を考え、そのシナプスが、入出力関係を学習するようにHebbおよびanti-Hebb機構によって変化するとする。その結果、フィードフォワード及びフィードバックのシナプス変化の時間スケールが適切な関係をみたすと、最大の記憶容量を持ちうることを示した。この際に、神経系のダイナミクスがいかに入力に応じて出力を出すよう分岐するかを解析した。特に、入力がない時に、記憶に対応した出力を経巡る自発的神経活動が生成されることを見出した。これは近年の実験とも対応する成果である。 3.相互作用により状態を分化させる力学系;カオスによる可塑性を持つ結合力学系が相互作用を通して階層的分化をすることを示した。 4.適応:外界に応答して順応するという2つの時間スケールを持つ結合力学系を調べ、自由度間の干渉による大自由度特有の適応を見出した。
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Research Products
(10 results)