2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳神経回路の同期の生成崩壊に基づく認知情報生成機構の解明
Project Area | The study on the neural dynamics for understanding communication in terms of complex hetero systems |
Project/Area Number |
21120005
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山口 陽子 独立行政法人理化学研究所, 創発知能ダイナミクス研究チーム, チームリーダー (00158122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北城 圭一 独立行政法人理化学研究所, 認知機能表現研究チーム, 副チームリーダー (70302601)
川崎 真弘 独立行政法人理化学研究所, 脳リズムモデル連携ユニット, 研究員 (40513370)
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Keywords | 脳波 / リズム / 同期 / 振動神経回路 / 位相固定 / TMS / 作業記憶 / 協力行動 |
Research Abstract |
本研究では脳高次機能におけるヘテロなリズム回路の同期原理を確立するために、ヒト脳波のモデル化による理論的検討を行い、さらに脳波同期を実験的に操作する手法を導入することを目的とした。方法として、一人の人間の脳内の同期回路としての解明、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いてヒトの脳活動に干渉しながら脳波測定をすることで、同期の因果性を解明する手法とする。さらにコミュニケーションする二人の脳についてリズム回路の生成崩壊について解析してコミュニケーションの神経機構を解明する。得られた成果は次の通り。 1 作業記憶課題では、記憶バッファー部位と前頭部とがアルファリズムとシータリズムの位相固定で動的にリンクするが、さらに金銭報酬による同期づけや刺激のカラーの嗜好により記憶要領が増大し、その増大をもたらす神経機構としてベータとシータの位相固定、シータの振幅増加が発生することを見いだした。全体として作業記憶回路のリズムによる階層的な制御機構が明らかになった。同期制御の理論モデルについても検討した。 2 弱い単発TMS印加での局所振動の位相反応曲線の解析、強いTMS印加での位相リセット、振幅変化の伝搬解析、さらには2連発TMSでの周波数特異的な制御可能性を検証した。 3 二人交互のボタン押し課題について17組の実験を実施し、脳波を測定して、二人の間に協力的に生まれるリズムと、それに対応する脳波成分について解析した。リズム間隔が揃う場合と揃わない場合で、分けて脳波を解析したところ、揃う方では自分のタップ、相手のタップ双方にミュー波の脱同期が見られた。また、タッピングの時系列について、位相応答曲線を用いて解析したところ、二人の間でほぼ反転するリズムの位相固定が生じていることがわかった。間隔を揃えるためのミューリズムと行動リズムの間の関係を今後検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの項目について、おおむね期待された結果がでた。他の班との協力を含めて、理論、実験の研究が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
一人の脳の中でのシータ、アルファ、ベータといった複数のリズムの回路の同期生成の計算論的な役割を解明する。それをもとに二人の交互タッピング課題での協調生成における二人の脳の同期活動のメカニズムと役割について解明する。同領域の他の班とも協力することで、理論モデル作成や、人間集団のコミュニケーションの理解に役立てる方向性についても探る。
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