2012 Fiscal Year Annual Research Report
Interactive mechanism for formulation of human prospection from memory and ongoing processes
Project Area | The study on the neural dynamics for understanding communication in terms of complex hetero systems |
Project/Area Number |
21120007
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
奥田 次郎 京都産業大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (80384725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 俊勝 東北福祉大学, 健康科学部, 教授 (70271913)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 記憶 / 展望 / 計画立て / 自己 / 他者 / コミュニケーション / 非侵襲脳計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人間が過去の経験から将来の行動を計画・記憶し、現在の状況に即してこれを動的に更新、適切に想起・遂行する認知脳メカニズムについて、「現在の環境の知覚・認知」、「文脈依存的な記憶の形成と取り出し」、「未来の行動予定の計画立てと遂行」という3つの中核的なプロセスの連関に着目しながら検討する。この検討を通して、複数認知プロセス間の相互連携に関わる神経ネットワーク間のコミュニケーション機構と、その個体間コミュニケーションに果たす役割の解明を目指す。 本年度は、「文脈依存的な記憶」に関して、特に人間のコミュニケーション活動と深く関わる、「情報を誰から得たか」に関する記憶(情報源の記憶; source memory)と「情報を誰に伝えたか」に関する記憶(伝達先の記憶; destination memory)に関わる脳活動を機能的MRIにより検討した。その結果、両者の記憶想起時に異なる内側側頭葉-皮質ネットワークが活動することを見い出した。さらに、このような情報源と情報発信先の記憶の分類を2者間記号コミュニケーション課題における被験者の行動分析に応用し、「相手から得た情報の記憶を基にした将来行動の計画立て」と「自己が発信した情報の記憶を基にした将来行動の計画立て」とを行動的に分離する分析方法を提案した。この2者間コミュニケーション課題を遂行中の被験者の脳波データに対し、提案した行動分析に応じた頭表脳波パターンの同定を行った。その結果、自他の記憶情報に応じた将来行動の計画立てが、脳波の異なる周波数帯の活動に依存するという新しい知見を得た。 また、本研究の実応用の試みの第一歩として、携帯型脳波計から取得した脳波周波数成分データをもとにしたモバイル情報端末のアプリケーション起動制御のシステムを構築・実装し、脳活動と情報機器の間のコミュニケーション様態に関する新たな可能性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで見過ごされてきた、自己と他者に関する文脈の記憶の分離を脳活動とともに示しただけでなく、これら2種類の記憶情報が人間の将来行動の計画立てにもそれぞれ分離して寄与しうることを明らかにしており、記憶と将来展望の関係についての新たな研究の方向性を開拓しつつある。さらに、このような自己と他者の記憶に基づく将来展望が、人間どうしのコミュニケーションシステム形成にどのように寄与するかについても、脳波成分とともに明らかにしつつあり、コミュニケーション神経情報学の構築に貢献し得る研究展開と考える。今後は、コミュニケーションシステム形成における個体間の脳活動の同期や相関に関する検討への進展が見込まれる。 また、これら基礎研究の知見の実応用の試みの第一歩として、脳活動計測情報をリアルタイムに携帯情報端末に無線送信し、情報端末のアプリケーションやコンテンツを脳活動から直接制御するシステムを世界で初めて構築・実装するに至った。このような実装研究は、単なる工学応用・新奇システム開発のみに留まらず、脳活動と情報機器、ならびにこれを操作する人間自身との間での新しいコミュニケーション形態を生み出すものであり、その様相やメカニズムを分析する新たな研究分野の開拓の可能性を秘めるものと期待する。
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Strategy for Future Research Activity |
2個体脳波同時計測実験の領域内共同研究プロジェクトをさらに推進させる。特に、自己と他者それぞれの記憶情報に基づく将来行動の計画・遂行における脳波同期ネットワークの解析や、2者の脳波活動間での相互作用の検討を行う。これらの検討を通して、自己と他者に関する知覚と記憶がお互いの将来行動の展望や計画形成とどのように関わるか整理し、これら認知プロセス間連携が個体間コミュニケーションに果たす役割についてのモデルを提唱する。
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Research Products
(12 results)