2012 Fiscal Year Annual Research Report
Study on meaning creation mechanism through interaction between linguistic inference and continuous dynamics
Project Area | The study on the neural dynamics for understanding communication in terms of complex hetero systems |
Project/Area Number |
21120011
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
橋本 敬 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (90313709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 純哉 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (40397443)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コミュニケーションシステム / 記号コミュニケーション / コノテーション / 移動情報量 / ミュー波抑制 / ミラーニューロンシステム / ACT-R / 調整ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
コミュニケーションを,相互理解のみならず,新しい情報や意味を作る活動と捉え,動的・生成的コミュニケーションの基盤メカニズムの研究を進めた.これまで言語進化実験により次の2点を明らかにした.1,コミュニケーション・システム自体が共通言語がない状態から二者間の相互作用を通じて創発する. 2,その形成過程には,共通基盤の構築(前記号的語用論段階),denotation(字義通りの意味)を伝える記号システムの共有(意味論・統語論段階),connotation(言外の意味)を伝える役割分担の形成(語用論段階)の3つのステップがある.移動情報量の解析では,課題成功群において,個人の行動の間での移動情報量は初期から低い状態にあり,二者の行動を交えた移動情報量は時間とともに減少することが分かった.成功群では,初めから整合的な行動をする主体が二者間の相互作用を通じて互いの行動を予測できるようになることを意味している. この実験を,ACT-Rという認知アーキテクチャを用いてシミュレーション解析を行った.その結果,他者が用いたメッセージや行動を模倣して行動決定をする方法を採れば,人間の実験が良く再現されることが分かった.上記の移動情報量の解析結果とこの結果を合わせて考えると,模倣により相手の行動を採り入れることで二者間の情報流が秩序化され,コミュニケーションシステムがうまく作られることが示唆される. さらに,脳システム班との共同研究により,この実験課題中の二者脳波同時計測を行っている.脳波データの予備的解析より,メッセージの送受信時に頭頂葉でμ波抑制が見られることが分かった.この結果はミラーニューロンシステムの活動を示唆するものである.本課題では,相手の動作を見聞きしていないが,そのような状況においても,コミュニケーションシステムをともに作っていく過程にはミラーシステムが関与する可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は記号コミュニケーションのダイナミクスに着目している.今年度は実験を通じて記号コミュニケーションシステムの形成過程・要因をより詳細に明らかにできた.さらに実験課題のシミュレーションに成功し,実験だけでは明らかにできない内部メカニズムの一端について推測することができた.これらの点は当初計画以上に進展していると言うことができる. 二者同時脳波計測を行ったが,二者の脳活動間の相関についてはまだ解析が進んでいない. また,記号コミュニケーションにより新しい意味や表現が生成する部分について,これまでの研究で得た知見をどのように拡張していけばいいかについてアイデアが出てきている段階である.これらの2点にちては十分に進展しているとは言えない.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も実験研究を中心に推進するとともに,実験時の脳波計測を新たに行い,二者間脳波相関とミュー波抑制の解析を進展させる. これまで行ってきた人工言語によるコミュニケーションシステム生成実験について,被験者を増やして実験を行い,コミュニケーションシステム形成のメカニズムを明らかにする.また,この課題実行時の脳解析を行い,コミュニケーションシステム形成時に働く脳部位やそのダイナミクスの特徴を明らかにする.特に,異なるチャンネル間の動的な相関,コミュニケーションを行う二者の同時計測による二者の脳間の相関,そして,コミュニケーションシステム形成時のミラーニューロンシステムの働きを明らかにする. 一方,モデル研究として,実験パラダイムをもとにしたシミュレーションモデルを3種類構築し解析してきたが,認知アーキテクチャのモデル,強化学習のモデルについてさらに解析を進め,実験結果との比較も踏まえて,コミュニケーションシステムが形成されるメカニズムを明らかにする.さらに,この実験を元にしたモデルに加え,意味生成に注力した新たなモデルをつくる.これは,一昨年度まで解析してきた発話・意味の生成・共有が起き得る文法推論とニューラルネットワークのヘテロシステムに,実験・脳活動解析およびモデル研究の成果を加えて発展させるものである. 最終的には,これらの成果を理論研究へまとめる.具体的には、新しいコミュニケーショ ンの数理モデルを構築することを目指す.
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Research Products
(19 results)