2022 Fiscal Year Annual Research Report
Selective Chemical Trasformation of Specific Sugars for Diversification of Glycan Mediating Membrane Dynamics
Project Area | Regulation of membrane dynamics by glycan chemical knock-in |
Project/Area Number |
21H05078
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
上田 善弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90751959)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | 糖 / 化学変換 / アシル化 / 位置選択性 / シリル化 / ケージド糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖はアミノ酸と並び生体高分子の主要な構成成分であり、広範な生体内反応に関わっている。糖が関与する生命現象を理解し制御するためには、化学的に純粋な糖関連物質の精密合成が必要となる。しかし、糖は分子内に複数の水酸基を有し、その水酸基が置換される位置や数によって多様性を持つ化合物群であるため、保護/脱保護を駆使して水酸基を区別しながら合成することとなり、煩雑さを極める。本研究では糖鎖上のある特定の糖選択的に化学修飾を行う手法を開発することで、合成法の確立されている糖鎖ライブラリの直接多様化することを目的としている。糖鎖は複数の末端糖を有することがほとんどであり、糖鎖の一部を選択的に化学変換するためには、糖を見分ける手法が必要となる。2022年度は、初年度に開発した糖選択的及び位置選択的アシル化反応の知見をもとに、糖類の位置選択的シリル化反応の検討を行った。その結果、シリル化に対して顕著な反応性を有する第一級水酸基共存下で、第二級水酸基へ選択的シリル化を進行させる新規触媒を見出した。グルコース誘導体やガラクトース誘導体に対して本法は適用可能であり、これらの第二級水酸基シリル保護体を一段階で得る手法として初めての方法である。また、これまでに開発した位置選択的化学変換を基盤として、A01「つくる」班との共同研究により、生物活性糖類の位置選択的修飾を試みた。その結果、ケージド糖を一段階で選択的に合成することが可能となり、光除去可能な置換基を導入することで、糖機能のON/OFFも可能であった。すなわち、選択的な化学修飾によって糖機能を「あやつる」ことができることを実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アシル化反応の他の官能基変換として種々検討を行った結果、当初想定していなかったシリル化反応に対して、分子認識型触媒が有効に働くことを見出した。即ち、構造の類似した第一級アルコール共存下で、特定の官能基を水酸基から遠隔位に有するアルコールへのシリル化が、顕著に加速される結果を得た。この知見をもとに、無保護糖の位置選択的シリル化の検討を行ったところ、6位第一級水酸基存在下で3位第二級水酸基優先的にシリル化が進行することを見出した。本例は、3位のみシリル化された糖誘導体を無保護糖から一段階で得る唯一の方法と言える。また、確立した糖選択的及び位置選択的化学修飾を、計画通り共同研究によって、生物活性を有する糖誘導体へと展開した。特に、ラムノース誘導体は免疫惹起作用を有するが、その3位アシル化体は生物活性を示さない。ラムノースの3位水酸基選択的アシル化を行い、そのアシル基を光によって除去することで、免疫惹起作用の時空間制御を行うことができた。このように申請時の予定通り、アシル化以外の官能基変換への分子認識型触媒の展開と、共同研究による生命科学研究を推進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度及び2022年度で開発した糖選択的及び位置選択的官能基変換の他にも、更なる修飾反応の開発に取り組む。また、2022年度で構築した連携基盤をもとに、A01「つくる」班との共同研究により、オリゴ糖の位置選択的官能基変換を狙う。刺激応答性置換基の導入による生物活性機能の時空間制御については、2022年度にproof of conceptを示すことができたため、2023年度はより価値の高い生物活性機能制御や部位特異的な機能発現研究に取り組む。即ち、細胞表層糖鎖の機能をケージングし、刺激によって望むタイミングで置換基を除去することで、糖鎖機能の時空間制御を実現する。 さらに、アシル化やシリル化以外にも選択的修飾反応を開発することで、生物活性分子の新たなケージング法の開発に取り組む。置換基の導入に拘らず、ゼロベースで機能性分子の設計を行うことで、容易に応用展開可能な手法の開発を行う。開発した手法は領域内共同研究によって、細胞膜上での機能制御な系へと展開していく。
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