2021 Fiscal Year Annual Research Report
ガス検出器を用いたリアルタイムミューオン検出による素粒子現象の探求
Project Area | Formation of the Multiscale Muon Imaging for Particles and Huge Structures |
Project/Area Number |
21H05085
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀井 泰之 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (80616839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 智之 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (50749629)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | 素粒子 / ミューオン / ガス検出器 / LHC / アトラス実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
LHC加速器のアトラス実験において、25ナノ秒おきに60発生する陽子陽子衝突中のミューオンをリアルタイム検出するシステムの調整および運用を行った。従来のミューオン検出システムは、最外層のTGCと呼ばれるガス検出器の信号を単純に利用するものであったが、本研究では、新たにNSWと呼ばれる検出器の信号を統合する。本年度は、NSWの信号を統合するための光ファイバーの敷設、論理回路の実装、テストパルスを用いた動作検証を完了させた。
また、2029年に運用を開始する高輝度LHCで実装することを目標に、25ナノ秒おきに200発生する陽子陽子衝突中でミューオンをリアルタイム検出するための電子回路の開発を行った。ザイリンクス社製の集積回路XCVU13Pを用いることで、1つの電子基板で約1万チャンネルの信号の受信と処理を実現する。本年度は、電子基板の試作機に対して、電源機能、通信機能などの基礎機能の検証を完了させた。また、XCVU13Pに搭載するミューオン飛跡検出アルゴリズムを開発し、論理シミュレーションで動作を検証した。
アトラス実験でこれまでに取得した陽子陽子衝突のデータを用いて、ヒッグス粒子の統合解析を行った。この統合解析では、ヒッグス粒子の種々の生成・崩壊過程の解析結果を用いて、ヒッグス粒子と他の素粒子の間の結合定数を抽出する。本研究では、ヒッグス粒子のミューオン対崩壊の解析結果を統合解析のインプットとして提供し、ヒッグス粒子とミューオンの結合定数が素粒子標準模型と矛盾しない結果を得た。この結果は、ミューオンの質量起源がヒッグス場にあることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25ナノ秒おきに60発生する陽子陽子衝突中のミューオンをリアルタイム検出するシステムの調整および運用、25ナノ秒おきに200発生する陽子陽子衝突中でミューオンをリアルタイム検出するための電子回路の開発、ヒッグス粒子の統合解析によるミューオンの質量起源の探求の全てにおいて、研究実施計画に記載した研究を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
25ナノ秒おきに60発生する陽子陽子衝突中のミューオンをリアルタイム検出するシステムを運用し、陽子陽子衝突データを蓄積する。得られた陽子陽子衝突データを用いて、トップクォーク質量の精密測定による真空安定性の研究、超対称性粒子の探索による暗黒物質の正体の研究を行う。終状態にミューオンを含む事象を用いることで、背景事象を効率的に除去する。
また、25ナノ秒おきに200発生する陽子陽子衝突中でミューオンをリアルタイム検出するための電子回路の試作機の検証を完了させ、実機の仕様を決める。
さらに、ミューオンを用いて巨大構造物をリアルタイムで透視するためのガス検出器システムの設計を行うために、アトラス実験のインフラ(電源やガス)を用いずにガス検出器を運用するための手法を確立する。
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