2021 Fiscal Year Annual Research Report
微量脳内分子の完全網羅解析を実現する極限検出システムの開発
Project Area | Innovative nanotechnology for probing molecular landscapes in the brain |
Project/Area Number |
21H05092
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川井 隆之 九州大学, 理学研究院, 准教授 (60738962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 誠一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40723284)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | キャピラリー電気泳動 / 質量分析 / 次世代シーケンサー / 神経伝達物質 / miRNA / 一分子検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超高感度キャピラリー電気泳動-質量分析 (CE-MS) を用いた一細胞レベルの微量生体試料の網羅分析技術に,次世代シーケンサー技術,ナノ材料化学・信号増幅・一分子検出などの技術を融合することで,微量脳内成分を最小で一分子から様々な生体分子を精密解析できる「極限検出システム」を開発する。 A01班が開発するナノマシンで回収された微量脳内分子を解析できるようにするため,A02班と連携してマウス生体脳からマイクロダイアリシスを用いて微量の脳内分子を経時的に回収し,次世代シーケンサーを利用したmiRNAオーム,超高感度CE-MSを用いたメタボローム解析を実施した。その結果,次世代シーケンサーを利用したmiRNAオーム解析は可能であったが,CE-MSでは従来の濃縮法 (LDIS法など) では高塩濃度のリンゲル液に分散した脳内分子を上手く濃縮できないことが判明した。そこで,新たな濃縮原理に基づく新規濃縮法を開発した。この手法により,数十mMオーダーのナトリウムなどの夾雑塩を含む溶液であっても,再現よくGABAなどの脳内分子を100倍以上濃縮することに成功し,リンゲル液を泳動液で10倍希釈した試料を高感度に測定することができた。 一方で一分子解析では,十分な分析感度を得るため,最も実績のある蛍光検出に基づく一分子蛍光顕微鏡を利用した。タンパク質混合物をcy5などの蛍光分子で標識し,CEで標的分子とそれ以外を空間的に分離し,さらに一分子ずつバックグラウンド成分と見分けてカウントすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル脳由来試料として採用したマイクロダイアリシスサンプルの解析について,CE-MS解析および次世代シーケンサー解析の両方に成功している。当初予定していたLDIS法などの従来濃縮法が機能しなかったことは誤算であったが,新規濃縮法を迅速に開発して対応することに成功しており,概ね予定通りに研究を推進できている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きA02班と連携し,主にマウス生体脳においてマイクロダイアリシスなどの比較的侵襲度の低い手法で微量の脳内分子を経時的に回収し,次世代シーケンサーを利用したmiRNAオーム,超高感度CE-MSを用いたメタボローム・ペプチドーム・プロテオーム解析を実施する。既に解析条件の最適化は完了しているため,各種成分をより高い時間分解能で測定可能なシステムを構築し,脳機能をより詳細な化学情報として記述することで,その機能解明を推進する。 一分子解析では,信頼性の高い一分子ターゲット分析のために標的分子のみを選択的に蛍光標識し,さらにバックグラウンドシグナルと見分ける新手法の開発に着手する。分担者が開発した分子選択的標識手法と信号増幅技術を組み合わせて適用することで,標的分子のみを自家蛍光を有する夾雑分子よりも強く光らせ,さらに分子的な重さを付与することで分子拡散を抑制する。これを電気泳動で分離し,一分子ずつバックグラウンド成分と見分けてカウントすることで,真に選択的かつ定量的な一分子検出を実現する。
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