2021 Fiscal Year Annual Research Report
Surface Hydrogen Engineering: Utilization of Spillover Hydrogen and Verification of Quantum Tunneling Effect
Project Area | Surface hydrogen engineering: Utilization of spillover hydrogen and verification of quantum tunneling effect |
Project/Area Number |
21H05098
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 浩亮 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90423087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 秀人 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (00452425)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | 水素スピルオーバー / 表面水素工学 / 量子トンネル効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
触媒分野では古くから知られる『水素スピルオーバー』現象の全容は未だ解明されておらず、またその利用は極めて限定的である。本申請課題では、高速に固体表面を移動する高密度かつ高活性なスピルオーバー水素を使いこなすための学理(表面水素工学)構築と、革新的応用分野の開拓をターゲットに、『制御因子の解明』、『特殊合金ナノ粒子合成への応用』を第一の目的とする。また、古典的熱力学に従わず、ポテンシャル障壁を透過して化学反応が進行する『量子トンネル効果』の寄与を実験的に検証することでその発現因子を突き止め、反応制御の可能性を実証することを第二の目的とする。 これまでRu3+とNi2+を担持したTiO2に水素昇温還元を施すと水素スピルオーバーが発現し、その強い還元駆動力によって非平衡RuNi合金粒子が形成することを見出してきた。本年度はこのRuNi合金粒子が各種還元性酸化物担体上で形成するかどうかを指標とすることで、それぞれの水素スピルオーバー機構を調査できると考えた。すなわち、非平衡RuNi合金粒子の作製や種々のキャラクタリゼーションを通じて、還元性担体の水素スピルオーバー機構を解明した。その結果、TiO2の場合、50 ℃以下での表面スピルオーバーが示された。一方でCeO2では、50~150 ℃間で、WO3の場合は150~250 ℃で表面をスピルオーバーすると言える。さらにMS測定によるHD生成を追跡した結果、TiO2、CeO2では表面のスピルオーバーが優先的に起こるのに対して、WO3では内部のスピルオーバーが優先的に起こることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、非平衡RuNi合金粒子の作製を通じて様々な還元性担体の詳細な水素スピルオーバー特性を調査した。RuとNiの金属前駆体の還元挙動をH2-TPR測定やin-situ XAFS測定を用いて追跡することで、各担体表面における水素スピルオーバー特性を考察した。さらに、DFT計算、in-situ DRIFT測定、MS測定、in-situ UV-vis測定、XRD測定など様々なキャラクタリゼーションを組み合わせることで表面だけでなく内部の水素スピルオーバー特性も解明することができた。これまで水素スピルオーバー研究は触媒分野のみに限定されており多面的なアプローチはなされなかった。本研究成果により、スピルオーバー水素を任意に制御して、これまで未踏であった新たな機能発現が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
触媒材料として全く未開拓な『ハイエントロピー(HEA)合金ナノ粒子』合成技術へと拡張する。HEAは、1)構成元素が5成分以上の多成分系かつそれぞれの組成が5~35at.%となる、2) 単相固溶体を形成、を満たす合金群であり、高温強度、熱的安定性、耐食性において優れた特殊機能を有する。しかしながらそのナノ粒子化の成功例が無い。その最大の理由は、低温において多成分金属の均一な核生成が困難であるためである。そこで申請者が発展させてきたスピルオーバー技術に関するノウハウを統合し、Cr、Ni, Cu, Fe, Co, Mn, Znなどの卑金属を構成主成分とする均一な合金ナノ粒子合成を試みる。 また、合成した特殊合金ナノ粒子の触媒機能を探索する。ターゲットとするのは高難度であるが炭素資源として高いポテンシャルをもつ二酸化炭素(CO2)の資源化反応である。ナノ粒子化による量子サイズ効果、異種金属間で電子的配位子効果(リガンド効果)、ならびに幾何学的協奏効果(アンサンブル効果)により特異機能の発現を狙う。さらに新規材料の詳細な構造解析により、微細構造と触媒機能の相関を明確にする。得られる知見は全くの未知であり学術的価値は極めて高く、先進的なマテリアルサイエンス分野へも多大な波及効果をもたらす。
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Research Products
(8 results)