2021 Fiscal Year Annual Research Report
オピオイド受容体の網羅的シグナル解析による薬理経路の同定
Project Area | Multi-scale platform for untangling physiological complexity |
Project/Area Number |
21H05113
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 飛鳥 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (50525813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 達也 東北大学, 薬学研究科, 助手 (80894815)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | GPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の対象の1つであるカッパーオピオイド受容体(KOR)に関しては、基準リガンドであるNalfurafineと比較して、YNT-1612はGタンパク質サブタイプ間でのシグナルバイアスは見られず、アレスチンリクルート活性が低下していた。アレスチンの構造変化やシグナル因子との結合の測定を試みたが、KORの基準リガンド自体がこれらの応答が微弱であり、YNT-1612のバイアス活性を評価することができなかった。また、今後のモデル動物でのYNT-1612の薬効評価を見据えて、マウスとラットのKORに対する活性を評価したところ、ヒトを含めたいずれの動物種のKORに対しても、アレスチン活性が弱く、Gタンパク質バイアス型アゴニストであることがわかった。他方の対象であるデルタオピオイド受容体(DOR)に関しては、基準リガンドであるメチオニンエンケファリンやSNC-80と比べて、KNT-127はGi活性はほぼ同等である一方、他のGタンパク質、特にGqとG12の活性が強いことがわかった。また、アレスチン経路については、KNT-127はアレスチンリクルート活性が弱く、IB30センサーで評価した場合のアレスチンの活性型構造変化が小さいことがわかった。一方、KNT-127はいずれのGRKサブタイプを介してアレスチンをリクルートする活性を示すことがわかった。また、X線結晶構造の安定型改変体として報告のあるDORの九重変異体に関して、KNT-127のGi活性に対する個々の変異の効果を調べたところ、2種類は野生型DORと同等の応答を示し、2種類が活性が低下し、残りの5種類が大きく活性が減弱することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に沿った研究を実施することができた。当初計画外の成果として、アンジオテンシン受容体をモデルとしたシグナル因子同士の制御機構の解明やスフィンゴシン1リン酸受容体をモデルとしたバイアスリガンドの構造基盤の解明の成果を得た。また、構造研究グループとの共同研究を通じて、ミューオピオイド受容体(MOR)とGタンパク質バイアス型アゴニストであるインドキシルプソイドインドキシル結合の構造・機能解析を実施し、バイアスの作動機序の知見を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
斉藤班が合成したYNT-1612の構造類縁体化合物として約30種類を保有しており、これらの化合物のGタンパク質とアレスチンのバイアス活性を網羅的に調べる。また、関連研究としてMORのアレスチン減弱型Gタンパク質バイアス型アゴニストであるインドキシルの誘導体のバイアスシグナル活性評価を行う。さらに、インドキシルプソイドインドキシル結合MOR構造の共同研究を通じて、Gタンパク質バイアス型アゴニストが受容体構造に及ぼす構造変化を理解し、同じオピオイド受容体に属するKORとDORの構造研究に役立てる。計算科学の活用として、KORとDORに対して構造決定されている受容体構造情報を用いて、YNT-1612とKNT-127のドッキングを実施する。この際、受容体のアミノ酸側鎖の向きだけでなく、主鎖の動きも構造変化パラメーターとする。さらに、脂質二重膜中でのアポ受容体の分子動力学シュミレーションを実施する。
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Research Products
(6 results)