2021 Fiscal Year Annual Research Report
脳脊髄液圧依存的な組織伸展と神経幹細胞への圧縮刺激による神経発生の調節機構の解明
Project Area | Pressio neuro-brain science: principle for brain function development through compressive stresses under physiological or pathological condition |
Project/Area Number |
21H05126
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中澤 直高 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (90800780)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | メカノバイオロジー / 神経発生 / 脳脊髄圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は脳内を遊走するニューロンを用いた研究から、柔軟な細胞核に加わる圧刺激が、細胞核移動やDNA損傷・修復という複数の異なる細胞機能に関与することを見出した。しかしながら、脳内の圧刺激が組織・細胞によってどのように検知され、神経ネットワーク形成の基盤となる 神経幹細胞分化や細胞移動に影響するのかは明らかでない。神経幹細胞は、脳脊髄液に満たされた脳室に面した脳室帯に存在するため、脳脊髄液に由来する水圧が圧刺激の要因となることが予想される。そこで本研究では、脳室帯を含む神経上皮組織に着目し、脳発生期における脳内の 圧刺激が神経幹細胞分化に影響するかを明らかにする。 申請者は、神経上皮組織が脳脊髄液由来の圧力を組織の伸展率に変換することで、圧力の変化として検知している可能性を考えている。この可能性を検証するため、本年度は独自の圧刺激付与デバイスを作製した。さらに、作製したデバイス上で神経上皮組織を培養し、顕微鏡下で上皮細胞の頂端面の動態が観察可能であることを確認した。他方、神経上皮組織内で神経幹細胞は混み合った状態にあり、一般的に未分化な幹細胞がもつ細胞核は特に柔軟であるため、頂端面に平 行な方向に起こる対称分裂などにより周辺の神経幹細胞がもつ細胞核は大きな圧刺激を受けると予想される。本年度は、細胞核に加わる圧縮力を定量するためのセンサーを森松班と共同で作製した。具体的には細胞核膜に局在する分子群をターゲットとし、培養細胞中でこれらが正常に細胞核に局在しうることを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスによる感染症拡大によって大学での研究活動に一部支障が出た上、半導体不足などによる機材調達の遅延から、予定通り進めることができなかった実験があったがおおむね順調に進展している。主に、1)独自の圧刺激付与デバイスを作製し、デバイス上の組織・細胞の動態が観察可能であることを確認した。 2)細胞核膜に局在する分子群をターゲットとした圧縮力センサーの作製を森松班と共同で開始し、培養細胞中で正常に局在しうることを確かめた。 の2点について進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ライブイメージング観察に必要な顕微鏡をセットアップし、細胞核の圧縮力センサーを発現させた神経幹細胞・神経組織をデバイス上で観察し、外環境からの圧刺激と細胞核に加わる圧縮力の大きさを定量する。さらに、それぞれのパラメーターを変化させることで、外環境からの圧刺激と細胞核に加わる 圧縮力が神経幹細胞・神経組織の形態、特に細胞頂端面の形状変化にどのような影響を与えるのかを検証する。
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