2021 Fiscal Year Annual Research Report
時間タンパク質学:巨大単細胞緑藻で探る1日を規定するタンパク質特性
Project Area | Chrono-proteinology: principle and design for protein timers |
Project/Area Number |
21H05131
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松尾 拓哉 名古屋大学, 遺伝子実験施設, 講師 (00452201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村中 智明 鹿児島大学, 農学部, 特別研究員PD (50761938)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | 概日時計 / カサノリ / 除核 / タンパク質 / トランスクリプトーム / クロロフィル遅延蛍光 / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内の情報処理は、転写ネットワークの枠組みで理解されることが多い。生物の1日を規定する概日時計も同様であり、真核生物では転写フィードバックループがリズム発振を担うと教科書に記載されている。しかし、転写阻害下でも概日リズムが観られるという矛盾が多くの生物群で報告されており、広く保存された転写に依存しない振動体の存在が議論されている。本研究では、核を取り除いても長期間に渡って安定な概日リズムを示す緑藻、カサノリを用い、除核細胞における概日リズムを生理レベルから分子レベルに至るあらゆる側面で解析する。タンパク質の修飾や複合体形成には特に着目する。 今年度は、1)カサノリの分子生物学基盤の整備と、2)除核カサノリのクロロフィル遅延蛍光における概日リズムの基本的性質の解析、を中心に進めた。1に関しては、カサノリの自家受精を数世代にわたり繰り返し、近交系の確立を進めた。また、トランスクリプトーム解析が可能な量と質のRNAを抽出する方法を確立した。2に関しては、クロロフィル遅延蛍光の概日リズムの測定系のハイスループット化に成功した。この系を用いて、除核カサノリの概日リズムの光応答や温度補償性を解析し、カサノリの概日時計は、本質的には核の有無に影響されないことを確認した。また、細胞内におけるリズムの位相解離や、配偶子形成時の周期異常など、これまで報告されていない現象をいくつか見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、進んでいる。また、予想していなかった発見もあり、研究のさらなる発展につながると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い進める。次年度においては、トランスクリプトームのde novoアッセンブリーを早期に進め、プロテオーム解析の基盤とする。平行して、プロテオーム解析に試供可能なサンプルの調製法の検討を行う。近交系の作製は今年度までに自家受精を6回繰り返しており、次年度には純系に近い状態に達すると期待される。また、ハイスループット化した遅延蛍光測定系を用いて、除核細胞の概日リズムに影響を与える薬剤のスクリーニングを行う。
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