2022 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding the holism of the brain by whole rodent brain simulation
Project Area | Holism in neuroscience: Large-scale recording and simulation |
Project/Area Number |
21H05137
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
五十嵐 潤 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 上級研究員 (60452827)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | スパイキングニューラルネットワーク / HPC / 神経振動 / コネクトーム / 大脳皮質 / 視床 / 小脳 / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、コネクトームベースの神経回路モデルの構築とシミュレーションの実施、データ同化の脳シミュレーション導入に向けた取り組み、脳と身体モデルの連関シミュレーションに向けた取り組みを行った。 昨年度に前処理済みのコネクトームデータについて、シミュレータのデータ読み込みとモデル構築の機能開発を行った。それをもとに、大脳皮質の運動野、視床、橋、小脳について、脳座標と解剖学・電気生理学データをもとに、個別領域の神経回路モデル構築を実施した。そのうえで、コネクトームデータをもとに領域間結合を導入し、運動野、橋、小脳、視床からなる神経回路モデルを構築した。シミュレーションでは、刺激により運動野で30-50Hzのガンマ周波数帯の同期活動が発生し、橋、小脳へと伝搬し、生理実験で観測されるような領域間の同期活動がみられ、新たに細胞種に特異的な発火位相分布がみられた。この結果は、振動的活動を介した領野間の協調が、コネクトームデータにもとづく領域間相互作用で起きる可能性について示唆している。 脳シミュレーションに導入するデータ同化における手法の選定について検討を行い、Local Ensemble Transform Kalman Filterの導入の候補とした。その計算量の見積もりを行い、実際に100アンサンブルメンバー相当の脳シミュレーションを大型計算機「富岳」で実行し、計算量的な実現性について確認した。 脳と身体モデルの連関について、脳と身体モデルのインターフェースについて実装法について検討し、共通設定ファイルとメッセージパッシングインターフェースを用いた通信による方法を採用することとした。脳と身体モデルそれぞれのプログラムの最小構成のプログラムを作成し、脳と身体モデルの間の情報通信の試験を行った。その結果、脳と身体モデルシミュレーションの連携の基礎部分の動作を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コネクトームベースの神経回路モデルの構築とシミュレーションの実施、データ同化の脳シミュレーション導入に向けた取り組み、脳と身体モデルの連関シミュレーションに向けた取り組みについて、それぞれ取り組みが進みつつあるものの、少々遅れが生じている。 前処理を施したデータをもとに個々の脳領域の神経回路モデル構築は進んでいて、領域間結合による複数領域のシミュレーションが実現してきている。しかし、シミュレータの機能実装において、複雑なモデル構築において、並列計算におけるメモリ分配で非効率性があり、モデル規模拡大の障害となっている。また、小脳のモデル記述で、脳の形状を記述する座標データの空間解像度が不十分であることが判明し、その解決が必要になり、予想外の作業が必要になるとみられる。 脳シミュレーションに導入するデータ同化においては、採用する手法の決定とそのための計算量についての調査が進んでいる。一方で、観測データと導入するフレームワークについて、まだ取り組みが進んでおらず、その対策が必要となっている。 脳と身体モデルの連関について、脳と身体モデルそれぞれのプログラムの最小構成のプログラムによる、脳と身体モデルの間の情報通信の動作を確認した。一方で、脳と身体の間の神経接続に関するデータについて、情報が限られていて、現実的な実装の詳細について検討をする必要がある。身体モデル開発を行う担当者と議論を行い、解決をする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、コネクトームベースの全脳シミュレーションを目指して神経回路モデル構築を拡大し、脳シミュレーションへのデータ同化導入を進め、脳ー身体の連関シミュレーションの実現を目指す。 コネクトームベースの神経回路シミュレーションにおいては、まだいくつかの課題が残されている。並列処理におけるメモリの割り当てに非効率部分があり、規模拡張が制限されている問題がある。また、より詳細なモデルの構築のために、顆粒皮質に関する解剖学・電気生理学データの導入、深部脳領域の小領域ごとの詳細な実装、小脳の空間構造の高精度化が必要である。これらについて取り組みを行い、脳の主要な領域である、大脳皮質、小脳、大脳基底核、視床からなる神経回路シミュレーションの実現を目指す。 コネクトームベースの全脳モデルと大規模脳活動データについてのデータ同化について、検討したLocal Ensemble Transform Kalman Filterの導入と有効性の検証を進める予定である。その上で、本領域の実験班の計測データにみられる複数脳領域の時空間パターンの間の関係性に焦点を当て、全脳規模での領域間の相互作用と情報処理との関係性について理解を進める。 脳ー身体の連関シミュレーションにおいては、最小限のシステムで検証した、脳と身体のシミュレータ間の通信インターフェースを用いて、脳と身体モデルの情報共有や神経信号の相互通信に向けて拡張する。それによって、脳ー身体の連関シミュレーションを実現し、脳、身体、環境の相互作用における脳と身体の活動の協調について理解を目指す。
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