2021 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の膜透過システムの4次元ダイナミクスとアッセンブリ
Project Area | Autonomous biological systems of megadalton complexity |
Project/Area Number |
21H05155
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
塚崎 智也 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80436716)
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Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
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Keywords | 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「メガ生命深化動態」解析のモデルケースとしてバクテリアの内膜・外膜を舞台とするダイナミックなタンパク質輸送を研究材料に、その基本原理の解明を目指している。タンパク質の膜透過・膜組込み過程は、生物に必須の細胞内機構の一つである。バクテリアでは内膜にSecトランスロコン(SecYEG)を中心とした複合体が存在し、Secトランスロコンをハブとするタンパク質輸送を担っている。基質が外膜タンパク質の場合は、Secトランスロコンを経由したのち、外膜へと組み込まれる。この一連の細胞内タンパク質輸送には多くの因子が関わり、それらの多くが解析困難な膜タンパク質である。これら因子が離合・集散を繰り返し、過渡的な複合体を形成し機能しているが、未だ高次分子機構は解明されていない。本年度はSecYEGとSecA ATPaseからなる複合体によるタンパク質膜透過の実態を解明すべく、SecYEGとSecAが含まれたナノディスクを調製し、動的構造解析のため高速原子間力顕微鏡による解析を進めた。基質タンパク質として、これまで多くの研究にモデルタンパク質として用いられているproOmpAだけでなく、さらに2つの基質タンパク質の調製に成功し、タンパク質の膜透過がproOmpAと同様に進むことが示された。これらの基質タンパク質を添加した状況で、SecYEGとSecAからなる複合体の動的解析を進めている。将来的には、分子動力学シミュレーションによる動的考察を統合し、タンパク質膜透過・膜組込み過程の分子機構を提唱する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標である4次元構造解析にむけた準備を着実に進めることができた。特に、SecA分子内の構造変化が見出せたことは、想定を超える観察結果であった。本年度はこの構造変化を一般化させるため、これまで用いていた1種類の基質だけでなく複数種類の基質が利用できるよう準備を行った。今後はこれらのサンプルを用いてSecタンパク質に共通した構造変化を観測していく。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、Secタンパク質の動態解析に関するデータが大量に蓄積されており、今後はこれらの膨大なデータを丹念に考察し、分析の結果をまとめ上げて発表に向けて取り組む予定である。Secタンパク質の機能モデルを構築するためには、分子動力学計算を用いて複数状態の構造モデルを生成し、これらのモデルを利用してタンパク質内の特定の領域の構造変化がいつ、どのような状況で起こっているかなどの情報を明らかにすることが重要である。このように、Secタンパク質の動態に関する解析をより詳細に行うことで、タンパク質の機能や働きに関する理解を深め、さらなる研究や応用の展開が期待される。
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Research Products
(13 results)