2022 Fiscal Year Annual Research Report
量子情報を用いた量子ブラックホールの内部の物理学の解明
Project Area | The Natural Laws of Extreme Universe--A New Paradigm for Spacetime and Matter from Quantum Information |
Project/Area Number |
21H05184
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯塚 則裕 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (40645462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇賀神 知紀 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (00837239)
寺嶋 靖治 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (20435621)
野海 俊文 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30709308)
重森 正樹 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (60608256)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Keywords | ブラックホール / エンタングルメントエントロピー / ホログラフィー / 弱い重力予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子もつれを表す典型的な指標であるエンタングルメントエントロピー(EE)は、スピン系など自由度が有限な系では完全に理解されていますが、連続的な場の理論では困難に直面します。仮に理論にUV cutoffを導入し、有限の自由度の理論にしたとしても、ゲージ理論の様にガウスの法則の制限がかかる場合、Hilbert 空間がfactorizeせず、そのような場合、EEをどう計算するのかは自明ではありません。本問題に対し、飯塚は姉川氏(大阪大)と Kabat氏(CUNY)との共同研究で昨年度提案した「砂時計法」という新しいEEの計算手法をMaxwellゲージ理論に適用し、ゲージ理論のLOCCで蒸留可能なEEを計算し、それが過去の文献で調べられている値と一致することを発見しました。これは砂時計法の有用性を示す結果です。また飯塚は、石橋氏(近畿大)、前田氏(芝浦工大)と共に 、回転しているブラックホールのアトラクター機構を調べました。重森は弦理論におけるある種のブラックホールの微視的状態の一部として表される“superstratum”と呼ばれるホライズンも特異点も持たない古典重力解を調べました。寺嶋は杉下氏(名大)との共同研究で AdS-Rindler時空の再構成法を再考し、ユニタリー性等により、正しいと信じられている、部分領域双対性、 エンタングルメントウェッジ再構成、ホログラフィック誤り訂正等が量子重力効果のため成立しない可能性があることを主張しました。野海はLau 氏(神戸大)、滝井氏(神戸 大)、玉岡氏(日本大)との共同研究でブラックホールの蒸発過程のユニタリ性の指標となる「ページ曲線」 を対称性の視点から一般化し議論しました。また野海は、 佐竹氏(神戸大)との共同研究で量子重力と無矛盾な理論模型の判別条件の1つと期待されている「弱い重力予想」の理論検証を行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子もつれについての新しい手法である砂時計法がLOCCで蒸留可能なエンタングルメントエントロピーをMaxwellゲージ理論で完全に再現できたことはこの手法の正しさを示すと共に、量子もつれの新たな計算法を開く結果と見做せる。また研究分担者も各々、ブラックホールやホログラフィー、重力理論に関する研究で成果を残しており、順調に研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はエンタングルメントエントロピーや量子情報など量子情報について得られた知識を様々な時空での物理学に応用し、ブラックホールや膨張宇宙の量子重力の理解を深める研究を引き続き遂行していく。
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Research Products
(33 results)