2021 Fiscal Year Annual Research Report
Quantum many-body systems and tensor networks from quantum information perspectives
Project Area | The Natural Laws of Extreme Universe--A New Paradigm for Spacetime and Matter from Quantum Information |
Project/Area Number |
21H05191
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
奥西 巧一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30332646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 宏 大阪大学, 量子情報・量子生命研究センター, 特任准教授(常勤) (40632758)
堀田 知佐 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50372909)
原田 健自 京都大学, 情報学研究科, 助教 (80303882)
桂 法称 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80534594)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Keywords | テンソルネットワーク / 量子多体問題 / エンタングルメント / 量子ダイナミクス / 量子計算 / くりこみ群 / 厳密解析 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,本学術変革領域の立ち上げとともに研究グループ内の連携体制を構築し,以下のような研究をおこなった。奥西は,格子ウンルー効果の観点からAKLT鎖に対してスピン演算子の角度時間発展の解析計算を行い,角度時間発展が一様磁場により生成される実時間ダイナミクスとして解釈可能なことを明らかにした。上田は,量子計算実機を用いた量子ダイナミクスおよび量子アルゴリズム研究を開始するとともに,A01班の協力者の藤井らとテンソルネットワーク(TN)の実空間的くりこみ群構造を反映させたハイブリッド型変分量子計算アルゴリズムの開発を行なった。その成果はPhys.Rev.X Quantum誌に出版された。堀田は有限温度の熱的量子純粋状態における行列積状態の純度やサンプリング効率を特徴づける指標を見出し,手法の有効性を評価する理論的な枠組みを確立するとともに,サイン2乗変形問題を古典量子多体系にも援用し,理論的に機能することを実証した。原田は,非エルミート系の作用素に対するテンソル繰り込み群法の開発を行った。また,桂は,Witten共役という手法を拡張して、厳密な基底状態を構成できる量子多体模型を系統的に構成する手法を提案するとともに,奥西と協力し,Affleck-Kennedy-Lieb-Tasaki(AKLT)鎖や双1次双2次スピン鎖と非局所双対変換を組み合わせて自己双対化した模型を構成し,その量子相転移および、量子エンタングルメントの非局所的な双対構造と対称性に守られたトポロジカル秩序との関係を解明した。 上記に加えて上田は稀薄量子気体極限を数値的に厳密に扱うことができる大規模角化法を整備し,QS3というパッケージとして公開した。また,奥西,上田および協力者の西野がテンソルネットワークの招待レビュー論文を執筆し,J.Phys.Soc.Jpn.誌に出版予定となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度であるため,領域の立ち上げと研究を軌道に載せることが主要目標であったが,その際に予定した研究はおおよそ達成することが出来ている。まず,量子多体ダイナミクスと関連して,有限温度の熱的量子純粋状態における行列積状態の性能を特徴づける指標みを確立するとともに,サイン2乗変形,厳密な基底状態を構成できる量子多体模型の系統的構成法,非局所双対変換に基づいた自己双対性とSPT秩序の量子相転移の解析などで着実な成果を見ることができた。さらに,格子ウンルー効果の観点から,AKLT鎖における角度時間発展が一様磁場により生成される実時間ダイナミクスとして解釈可能なことを明らかにした。今後,物性と量子重力現象の境界領域研究の展開につながる重要な一歩である。これらに加え,上田らがQS3という大規模厳密対角化法のパッケージ開発とそのリリースも行なった。これは希薄領域に限定されるが極めて大規模なサイズを厳密に扱える手法であるため,今後,他班とも連携した希薄冷却原子気体のダイナミクス解析等に威力を発揮すると期待される。さらに,ハイブリッド型変分量子計算アルゴリズム等において,他班との連携を取り入れた研究成果も得られている。 一方,テンソルネットワーク(TN)法のアルゴリズム開発は長期的な課題であるため,初年度には論文としての出版には至っていないが,Tree型のTNのネットワーク構造とその最適化アルゴリズムの実装方針についても一定の進展が見られており,次年度以降に研究を発展的に継続していけると期待される。さらに,TNの招待レビュー論文が出版に至ったことで,本領域のキーワードの一つであるTNに関心を持つ領域内外の研究者の後方支援が可能となったとともに,この分野の日本の存在感を示すこともできたと考えている。これらのことから,当初の計画通りの研究を推進できたと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に本計画班の研究が予定通りの立ち上がったことを踏まえ,令和4年度はその研究成果を着実に論文化するとともに,その進展より得られた知見を長期的な研究展望に関連付けながら研究を推進する方針である。テンソルネットワーク(TN)については,代表者、分担者および研究協力者が協力して,TreeのTNの構造最適化の原理の解明と具体的なアルゴリズムを構築,および,エンタングルメントを指標にしたTNの分割・構成理論の定式化やホログラフィーとの関係の解明等を推進する。これらのTNの理論的側面の研究は,本科研費雇用の特任研究員の着任後,高次元アルゴリズム開発を加速させるための準備も兼ねる。また,TNのハイブリッド量子計算法やボルン機械学習問題への応用を量子情報分野との連携した長期的な研究展開へとつなげていく予定である。 具体的な物理系や量子多体ダイナミクスの解明の観点からは,まず,昨年度の進展を受け,行列積型の熱的量子状態の質を評価するための計算複雑性の指標の具体化を進めるとともに,他班とも連携した量子スピンシミュレータQS3の機能拡充により,冷却原子気体系におけるボース凝縮やドメイン壁的な基底状態の安定性の解析へと研究展開をはかる。また,厳密解析により抽出した散逸のある量子多体系や非平衡ダイナミクスの背後の数理的構造の知見に,本科研費雇用の特任研究員による場の理論的解析や非エルミート系のテンソル繰り込み群法を組み合わせ,理論と数値計算の両面で非平衡現象の精密解析を進めていく予定である。さらに,角度時間発展を基にしたハルデン状態に対する格子ウンルー効果の解析等で,物性系における疑似的量子重力現象の検証へと繋げていきたいと考えている。 なお,TN法アルゴリズム開発用の計算機および,GPU計算システムを整備し,研究環境の強化をはかるとともに,他班との融合研究の進展にも資する方針である。
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Research Products
(54 results)