2023 Fiscal Year Annual Research Report
多様な分子構造の自動設計と有機合成反応の新規表現開発
Project Area | Digitalization-driven Transformative Organic Synthesis (Digi-TOS) |
Project/Area Number |
21H05220
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
宮尾 知幸 奈良先端科学技術大学院大学, データ駆動型サイエンス創造センター, 准教授 (20823909)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Keywords | 化学情報学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は2つのテーマを目的としている: (テーマ1) 多様な分子構造の自動設計と (テーマ2)有機合成反応の新規表現開発。今年度の実績としては、 (テーマ1) における分子構造生成を進めてきた。特に、医薬品候補化合物としての低分子化合物設計に焦点を当てて研究を進めている。分子骨格は異なるが類似の活性を示す化合物を生成することができれば、類似機能を有する化合物を多様に生成(提案)できたことになる。そのための前提条件として、立体配座が既往の活性化合物と類似していることが必要条件となる。この概念「Scaffold hopping」を実現するために、「立体配座としての類似度は高いが構造式としての類似度は低い分子骨格」を生成する分子骨格生成モデルを構築した。分子骨格の定義として、BemisとMurckoが規定した化合物の側鎖だけを取り除いた構造(BM骨格)に含まれる原子を全て炭素原子に置換した骨格を用いた。構造式としての類似度はextended connectivity fingerprintによるTanimoto類似度で評価し、立体配座の類似度はRapid Overlay of Chemical Structureを用いた。適切な閾値を定めることで、目的に合致する分子骨格ペアをユニークな組み合わせとして50万ペア準備した。これは、購入可能な大規模化合物データベースであるZINC (ver.15)に含まれる約1千万を超える化合物から抽出および計算することにより準備された。この50万ペアをTransformerモデルに学習させることで、入力したBM骨格に対してSH関係となる分子骨格を生成する骨格生成モデルを考案した。比較手法としてランダムに分子骨格をサンプリングした場合、Transformerモデルにランダムな骨格ペアを学習させた場合と比較して、優位にSH関係となる分子骨格を生成できていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(テーマ1) 多様な分子構造の自動設計を推進している。多様な機能性分子自動設計のためには、「構造式としての類似度は低いが立体配座としての類似度が高い分子骨格の設計」が第一段階である。今回、この分子骨格変換モデルをTransformerモデルにより構築した。特に、多様なSH骨格ペアを既存の大規模化合物ライブラリから構築し、SMILES表現した骨格変換プログラムにより、既存の手法(コントロール)と比較して有意にSH骨格が生成できていることが示された。この方法により、分子骨格の段階で、実験化学者による評価、コンピュータによる安定性評価などを組み込むこともでき、新規かつ多様な分子構造を創出するための道具として利用することを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は(テーマ1)多様な分子構造の生成と(テーマ2)を同時に推進したい。テーマ1では生成したSH分子骨格に対して類縁体の生成、計算化学による高精度評価を組み合わせることで、焦点を当てた場合の構造の多様性を把握し新規分子骨格からなる機能性分子を生成し、領域内の共同研究を進めることで実際に手法のコンセプトを実証したい。テーマ2では、分子動力学計算によるシミュレーションの結果を分子表現として導入することで、反応における溶媒効果などの化学反応における表現が難しい現象を記述子として表現する方法論を構築する予定である。
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