2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Electronic, Photonic, and Energy Applications with 2.5 Dimensional Structures
Project Area | Science of 2.5 Dimensional Materials: Paradigm Shift of Materials Science Toward Future Social Innovation |
Project/Area Number |
21H05237
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上野 貢生 北海道大学, 理学研究院, 教授 (00431346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長汐 晃輔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20373441)
大野 雄高 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (10324451)
松尾 吉晃 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (20275308)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Keywords | 2.5次元物質 / 界面・空間 / 電子デバイス / 光デバイス / エネルギーデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の上野は、吾郷Gと共同で高度微細加工技術によりグラフェンナノパターンを作製し、中赤外域におけるプラズモン分光特性を明らかにした。また、松尾Gと共同で、赤外プラズモン構造上にピラー化炭素を転写し、層間に取り込んだ分子の赤外分光計測に成功した。さらに、宮田Gと共同でニセレン化タングステンを合成し、プラズモンナノ構造との電磁的な相互作用や発光増強のメカニズムを明らかにすることに成功した。 分担者の長汐は、上野啓Gと宮田Gと共同で、NbドープMoS2によるトンネルFET特性評価を行った。単層/多層が接続した同一結晶面内ヘテロ構造のトンネルFETデバイスを作製し、室温において負性微分抵抗を観測した。これによりタイプIIIのバンドアライメントによるバンド間トンネルであることがわかり、初めて制御したドープ結晶によるN型トンネルFET動作を示した。 大野は、カーボンナノチューブと分子の作るナノスケールの積層構造の形成とそれを用いた超高密度ニューラルネットワークの創出を目指し、リザバーコンピューティング実験系の構築・改良やカーボンナノチューブ電気化学センサにおけるリザバー動作の実証と高次元化などを中心に研究を行った。その結果、特に、カーボンナノチューブ電気化学センサのアレイを用いてリザバーコンピューティングが可能であることを実証し、それを用いたI型糖尿病患者の血糖値の変化の予測に成功した。 松尾は、吾郷Gと共同で2層グラフェンへの電気化学的アニオン挿入・脱離挙動を調べ、単層のグラフェンでは見られない電流ピークを観測し、これが黒鉛よりも低電位で見られることを見出した。また、松本Gと共同でグラフェンライクグラファイトへの化学的インターカレーション挙動を調べ、金属塩化物が黒鉛よりも高速かつ容易に進行することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の上野は、計画通り吾郷Gと共同でグラフェンのナノパターンの高精度な作製技術の確立や松尾Gとピラー化炭素を用いてファノ共鳴を利用した赤外プラズモンセンサーを構築した。また、光エネルギー変換・発光デバイスを構築するため、宮田Gや長汐Gと共同で複数種の遷移金属ダイカルコゲナイド層状化合物のCVD合成やそれらの積層技術を予定通り構築することに成功した。 分担者の長汐は、従来、トンネルFETに必要とされる高濃度ドープ結晶は欠陥起因の制御不可能な結晶を利用していたが,上野啓Gと組むことで、P型としてNb置換量を制御した高濃度結晶を育成することに成功している。P型だけでなくN型結晶も育成可能なことから今後の展開が期待できる。 大野は、ナノ積層構造を用いたリザバーコンピューティングの創出を目指し、実験系の構築を終え、カーボンナノチューブデバイスによる実証や血糖値変化の予測の成功、櫻井Gや岡田Gと共同でスマネンとナノチューブの積層構造の試作・評価など、着実に研究が進んでいる。 松尾は、2.5次元化による炭素材料へのイオンの挿入脱離量の増加と高速化を目指しているが、2022年度の検討で、積層枚数を少なくすることによってイオンの挿入脱離が容易になること、グラフェンへの酸素ドープによっても挿入反応が容易になることを見出しており、これらは2.5次元材料のエネルギーデバイス応用を進めるうえで重要な知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の上野は、2.5次元物質を用いた光デバイスを構築するための材料創製を行う。松尾Gとの共同研究において構築したピラー化炭素/赤外プラズモン積層構造を用いて化学センサーとしての評価を継続して行う。また、宮田Gや長汐Gとの共同研究により構築した遷移金属ダイカルコゲナイドヘテロ構造上にプラズモンナノ構造を作製し、光物性を明らかにする。二硫化モリブデン上に金ナノ構造を配置し、光触媒特性を明らかにする。 分担者の長汐は、N型結晶としてReドープ結晶を上野啓Gと共同で育成し、P型トンネルFETを作製して特性評価を行う。また、エネルギー可変の光照射によるギャップ内準位計測を行う予定であったが、可能な光照射エネルギー領域の算出のための予備実験が必要であったため繰り越しを行った。 大野は、カーボンナノチューブと分子の作るナノスケールの積層構造の形成とそれを用いた超高密度ニューラルネットワークの実現を目指し、スマネンとカーボンナノチューブの積層構造の精密形成を行い、各種スマネンとカーボンナノチューブとの相互作用の解明とメモリ動作の実証を行う。 松尾は、吾郷Gと共同でさらに積層枚数の多いグラフェンのアニオンの電気化学的挿入脱離挙動の検討を進める。また、松本GへGLGを提供し、金属塩化物の挿入を検討する。さらに、ピラー化炭素薄膜の緻密化を進め、全固体型リチウムイオン電池負極として用いた場合の電解質の分解による不可逆容量の低減を検討する。加えてGLGへのアニオン挿入脱離挙動への電解液の影響を検討する。
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