2023 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内分子構造動態を解明するためのクロススケールIn-cell NMR解析
Project Area | New cross-scale biology |
Project/Area Number |
21H05250
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西田 紀貴 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (50456183)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Keywords | in-cell NMR / 動的構造平衡 / HDM2 / メゾ複雑体 |
Outline of Annual Research Achievements |
①細胞内構造ダイナミクスの観測:E3ユビキチンリガーゼであるHDM2のp53結合ドメインの動的構造解析を行った。これまでの研究からHDM2はp53結合部位が露出したopen状態と、N末端のフレキシブルなlidがp53結合部位を塞ぐように結合したclosed状態の2状態平衡にあると考えられてきたが、我々のNMR解析からHDM2はclosed状態内にfast exchange regimeの交換を含むmulti-stateな構造平衡にあることを見出した。また、分子動力学シミュレーションによりNMR観測結果と合致する2つのclosed状態の構造を可視化することにも成功した。 ②特定の細胞内局所環境の影響を解明する技術:大腸菌ペリプラズム空間内に局在化したメタロβラクタマーゼ(MBL)を対象としたin-cell NMR観測を試みた。まず、N末端のシグナル配列を検討し、MalE配列が最も高効率にペリプラズム空間への発現を誘導することを見出した。さらに発現誘導時に5-フルオロインドールを培地に添加することで、MDL-1のTrp残基のin-cell NMRシグナルを観測することができた。またMDL-1の阻害剤であるミリセチン添加により相互作用に伴う化学シフト変化の観測にも成功した。 ③細胞内メゾ複雑体の構造解析:低温条件下でのαシヌクレインのin-cell NMR観測を行うため、低温条件でもゲル状態を保持可能なアルギン酸ビーズに細胞を封入して、バイオリアクター潅流下でのin-cell NMR観測を行った。その結果、20時間にわたってαSYNのin-cell NMRシグナルを観測できることが示された。 SARS-Cov2由来ORF6は核膜孔タンパク質を介した細胞内輸送を阻害する。ORF6のサイズ排除クロマトグラフィーとNMR解析を行い、オリゴマーを形成したORFの一部が溶液中ではフレキシブルな構造をとっていることを明らかにした。この領域を介してORF6オリゴマーが核膜タンパク質Rae1と相互作用に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度に引き続きIn-cell NMR観測法の技術開発を行い、①NMRと分子動力学計算を組み合わせた動的構造平衡の解析法の開発、②19Fプローブを利用して大腸菌ペリプラズム空間に局在化したタンパク質のin-cell NMRシグナルの観測に成功するなど、一定の成果を挙げることができた。加えて細胞内メゾ複雑体を観測対象としたIn-cell NMR観測にも着手し、細胞内におけるαSYNのNMRシグナルを長時間にわたって観測する手法を確立できたことから、研究は概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内構造ダイナミクスの解析については、新たにE3ユビキチンリガーゼHDM2の動的構造にリン酸化や分子混雑環境が与える影響をNMRと分子動力学シミュレーションの両面から解析を行う。また、19FをプローブとしたIn-cell NMR観測については、細胞膜に局在化したKRASにも対象を広げる。αSYNについては今年度に確立した低温条件下でのIn-cell NMR法を野生型や様々な病原性変異体に適用し、モノマー間の相互作用や線維形成に由来するNMRシグナル変化の観測を試みる。さらに領域内の共同研究を進め、NMR法による動的構造情報に基づいてメゾ複雑体の構造・機能解明に貢献する。
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Research Products
(15 results)