2022 Fiscal Year Annual Research Report
クロススケール細胞内分子構造動態解析が解明するタンパク質凝集化による神経変性機構
Project Area | New cross-scale biology |
Project/Area Number |
21H05257
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 元雅 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (40321781)
|
Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
|
Keywords | アミロイド / 相分離 / プロファイリング |
Outline of Annual Research Achievements |
神経変性疾患患者の細胞には原因タンパク質のアミロイドが蓄積し、細胞内のアミロイドは構造、サイズ、局在が多様な“メゾ複雑体”であり、それら異なる分子の分布は細胞機能障害や毒性に深く関わる。本年度はアミロイドの微細構造や構造分布を定量的に調べることができる技術の開発を目指した。 これまでの予備的な知見をもとに、細胞内でタンパク質の凝集および脱凝集を調べることができる実験系の開発を進めた。まず、患者脳内と同一の構造をもつアミロイドの作成を試みた。その結果、リコンビナントのタンパク質から疾患型のアミロイドを再現性よく作成する手法をほぼ確立させ、患者脳由来と同じ構造を取ることを複数の種類のアミロイドの構造解析から明らかにした。また、細胞内アミロイドの構造多型を定量的にプロファイリングするための抗体作成法を設計し、その発現、精製を行った。一方で、細胞内では、神経変性疾患関連タンパク質は凝集前にも相分離を起こしていると示唆されている。その相分離からアミロイドが生成し、シナプス機能障害をもたらす分子機序を調べるため、シナプス関連タンパク質の相分離実験系の構築を進めた。 また、本領域におけるクロススケール細胞計測センターにおいては、金沢大学のグループとAFMを用いた二つの共同研究を進めた。高速原子間力顕微鏡でアミロイドの脱凝集過程を高精度に調べるための実験系の開発を進め、また、アミロイドの微細な内部構造を観察する手法を用いてアミロイドの構造的特徴を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造やサイズの異なる様々なメゾ複雑体を定量する技術や相分離実験系の開発が順調に進展しているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞内のメゾ複雑体を定量に関してはこれまでに設計、精製した各種抗体を導入し、アミロイドを構造によって分類し、シークエンスによって定量できるよう条件検討を進める。相分離実験系の開発に関しては、タンパク質の精製法をさらに改良し、より安定的にシナプスタンパク質を得ることで相分離現象の解析を行う。 クライオ電子顕微鏡およびAFMでの解析に関しては引き続き、アミロイドの物性に着目した実験および脱凝集アッセイをさらに進める。高速原子間力顕微鏡を用いた脱凝集解析に関してはクロススケール細胞計測センターと協同で、これまでに進展させてきた高速・高分解能での測定系の最適化をさらに進める予定である。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 生体分子環境の化学2023
Author(s)
野村高志、田中元雅、他(日本化学会編)
Total Pages
173
Publisher
化学同人
ISBN
978-4-7598-1405-7
-