2022 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質品質管理を支える電子移動媒体としての超硫黄分子の役割
Project Area | Life Science Innovation Driven by Supersulfide Biology |
Project/Area Number |
21H05268
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
潮田 亮 京都産業大学, 生命科学部, 准教授 (30553367)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2026-03-31
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Keywords | タンパク質品質管理 / レドックス / 小胞体 |
Outline of Annual Research Achievements |
CHO細胞を用いたmAb生産における新たな高発現プロモーターの開発に焦点を当てた。従来のプロモーターは、培養期間の後半に効果が低下する傾向があったが、CHO細胞のトランスクリプトーム解析を行い、培養期間全体を通じて発現が持続する遺伝子を特定した。その結果、「Hspa5」プロモーターを発見した。このプロモーターは、培養期間の後半でも抗体生産性を向上させ、異なるIgGサブクラスにも適用できることが示された。さらに、このプロモーターの活性は、未処理タンパク質応答(UPR)に関連しており、内分泌ストレスに影響を受けることが示唆された。このプロモーターの活用により、細胞内のタンパク質の安定した発現と恒常性の維持に寄与できる可能性が示された。本研究の成果は、CHO細胞での抗体生産において新たな高発現プロモーターを活用する方法を提供し、長期間の培養におけるタンパク質生産の安定性を向上させるものである(Tanemura et al., Sci. Rep 2021)。次に、超硫黄分子がタンパク質品質管理に与える影響と電子移動のメカニズムに焦点を当てた。Uegakiらは、小胞体酸化還元酵素Ero1aが還元酵素ERdj5の電子供給源であることを発見した。彼らは、ERdj5が小胞体の酸化的折りたたみ過程で生じる電子を利用して還元反応に寄与することを明らかにした。これにより、小胞体の酸化環境と還元反応のバランスを維持するための具体的な電子伝達経路が特定され、H2O2生成を抑制し、ERの恒常性維持に寄与することが示された。この発見は、電子供給メカニズムに関する新たな知見をもたらし、タンパク質品質管理システムの理解に貢献するものである(Uegaki et al., Cell Rep. in press)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
硫黄分子がタンパク質品質管理に与える影響と電子移動のメカニズムの解明が進んでいる。Uegakiらは、小胞体酸化還元酵素Ero1aが還元酵素ERdj5の電子供給源であることを明らかにした。ERdj5が小胞体の酸化的折りたたみ過程で生じる電子を利用して還元反応に寄与することが示された。また、ERの酸化的環境と還元反応のバランスを維持するための具体的な電子伝達経路も特定され、小胞体内でのH2O2生成を抑制し、ERの恒常性維持に貢献することが示された。これらの成果は、電子供給メカニズムに関する新たな知見を提供し、タンパク質品質管理システムの理解に寄与している。これらの成果は、研究が予定通り順調に進んでいることを示しており、今後の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質品質管理における超硫黄分子の役割と機能を明らかにすることを目的としている。これには、タンパク質の機能調節、小胞体関連分解(ERAD)のメカニズム、新生ポリペプチドの酸化的折りたたみ、カルシウムイオン環境の調節、フォールディング環境の可視化などが含まれる。 まず、チオレドキシン様タンパク質ERp18が小胞体内でZn2+に依存して機能を切り替えるメカニズムを解明することで、亜鉛イオンがタンパク質の機能を調節する方法について理解を深める。また、還元酵素ERdj5とBiPの協調作用を調査し、小胞体関連分解(ERAD)における基質のジスルフィド結合の還元メカニズムを明らかにすることで、タンパク質品質管理システムの理解を深める。 新生ポリペプチドの酸化的折りたたみがER内の還元反応に電子を供給するプロセスを解明し、細胞内のタンパク質の正しい折りたたみと機能を確保するためのメカニズムを明らかにする。さらに、小胞体の酸化還元状態がカルシウムイオンチャネルであるIP3受容体の活性をどのように調節するかを調査し、カルシウムイオン環境のレドックス依存的な制御のメカニズムを明らかにする。最後に、フォールディング環境を可視化するための新しいセンサーを開発し、タンパク質の折りたたみと品質管理の動的な変化を観察する。 この研究により、超硫黄分子がタンパク質品質管理にどのように寄与するかについての有用な知見が期待される。また、超硫黄分子を媒体とする電子移動のメカニズムや小胞体の酸化還元環境の維持に関する理解が深まり、還元酵素が小胞体で機能する理由に関する長年の問題の解決にも貢献する見込みである。
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