2013 Fiscal Year Annual Research Report
狩猟採集民の調査に基づくヒトの学習行動の特性の実証的研究
Project Area | Replacement of Neanderthals by Homo sapiens: testing evolutionary models of learning |
Project/Area Number |
22101003
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
寺嶋 秀明 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (10135098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 正 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (50242889)
窪田 幸子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80268507)
今村 薫 名古屋学院大学, 経済学部, 教授 (40288444)
大村 敬一 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (40261250)
亀井 伸孝 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50388724)
山上 栄子 神戸学院大学, 人文学部, 講師 (40517380)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 狩猟採集民 / 子ども / 学習 / 遊び / 創造性 / 社会進化 / 遊び集団 |
Research Abstract |
本研究は,文化人類学および発達心理学・教育心理学的手法によって狩猟採集民の子供の学習行動、特に遊びと呼ばれる行動に注目して日々の学習行動の実態を把握し、実証的に新人の学習の特性を解明する。 平成25年度はこれまでの成果を継承し,さらに現地調査と文献調査を進め,学習能力の進化に関する理論的考察を行った。バカピグミーについては,狩猟採集生活と遊び集団を中心とした子どもの諸活動の観察を行い、また心理学的な実験も含めて学習と創造性発現の実態を調査した。ワシントン州立大学教授のBarry Hewlett 博士をリーダーとする調査グループはアカピグミーおよびエチオピアのチャブ族を対象として,子どものナチュラル・ペダゴジーの実態解明,思春期と創造的学習との関係の把握,そして狩猟採集民と農耕民との遊びと学習の比較研究に取り組み,またチャブ族の生業とくに槍猟における技術伝達と学習を調査した。ブッシュマンでは伝統的狩猟方法に組み込まれた学習の実態,ならびに踊りなどの集団的行為に組み込まれた学習方法に関するデータの集積と解析を行った。オーストラリア原住民では芸術表現の実践と学習,カナダ・イヌイトでは教育実践とメタラーニングの関連を明らかにした。 交替劇全体での研究大会2回(春・秋)の他,A02班会議を3回開催し,各自の成果の進捗を報告すると同時に,研究全体の統合のための意見交換を行った。とくに第8回の研究大会(平成25年12月)ではA02班の主導による学際的シンポジウムを行った。さらにA02班のこれまでの研究成果を英文の著作という形で発表するための国際ワークショップを3月に開催した。「人類進化の観点からみる社会学習と創造的学習」をテーマとして,国内の研究者15名の他に外国人研究協力者8人が参加し,ヒトにおける強力な社会学習の実態と創造的行動が発現する条件について重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査の面ではこれまでの調査の継続発展として,アフリカ,オーストラリア,カナダにおいて文化人類学,生態人類学および発達・臨床・教育心理学の現地調査を実施し,データの収集を行った。アフリカのカメルーンの調査では招待研究の山内太郎北大教授のグループとの共同研究もスムーズに行われ,大きな成果を上げることができた。ブッシュマンでの調査も今村教授,高田准教授の二人によって予定通り遂行した。カナダ・イヌイトやオーストラリア原住民調査では,継続的なデータ収集と新しい視点からのデータ収集をおこなった。また,学習の進化に関する理論研究についても,フィールドからの新知見を組み込みながら綿密な共同研究を重ね,学習をより大きな視野からとらえることができるようになった。年度末にはA02班の総合的報告書として「交替劇A-02班研究報告書 No.4」を刊行した。また他班とともに2012年秋の国際シンポジウムをもとにした英文論文集を作成した。 他班との共同研究については,第8回の研究大会においてA02班の主導による学際的シンポジウムを企画し,ヒトの象徴的能力,メタラーニング,そして発達と学習の共進化という,ホモサピエンスの学習行動の根幹に関わる3つのテーマについて,A01(考古学班),B01(理論モデル班),C02(脳機能・イメージング班)の研究者,さらにプロジェクトメンバー以外の研究者の参加も得て,広く情報発信を行い,活発な意見交換によって議論を深めることができた。今後さらに広範囲な連携を構築し,交替劇全体の統合的進展を画す予定である。 また,研究成果として平成26年中に刊行予定の英文による研究書『人類進化の観点からみる社会学習と創造的学習』に関するワークショップを3月末に行い,神戸市に国内外23名の研究者が集い,ヒト独自の学習様式についてさまざまな観点から発表と討論を行い,知見を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は最終年度として,現地調査による研究・文献研究,そして理論的研究の各部門において詰めを行い,交替劇の時期におけるサピエンスの学習行動の実態を推測し,またネアンデルタールとの有りうべき行動的・能力的差異について研究を深め,「交替劇」研究の総仕上げをおこなう。とくに「交替劇」領域の研究の要である他の研究班との連携を強め,学際的基盤に立った研究の理論的な統合に寄与し,ホモサピエンスの進化の道筋を解明する。平成26年12月には,第2回の国際シンポジウムが北海道にて開催され,内外の研究者が集う。その場においてこれまでの成果を世界に発信し,現生人類を対象とする人類学的研究チームとして,交替劇の真相解明に貢献する。また平成26年12月末までに,内外の研究者役30名による人類進化の観点からみた現代人の学習行動の特性に関する英文総合的研究書,『人類進化の観点からみる社会学習と創造的学習』(Social Learning and Innovation in contemporary Hunter-Gatherers: Evolutionary and Ethnographic Perspectives) を刊行し,成果を世に問う。
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Research Products
(50 results)
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[Book] 教育心理学2013
Author(s)
安藤 寿康・鹿毛 雅治(編著)
Total Pages
350 (2-41, 144-154)
Publisher
慶應義塾大学出版会
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