2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Replacement of Neanderthals by Homo sapiens: testing evolutionary models of learning |
Project/Area Number |
22101007
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田邊 宏樹 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20414021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定藤 規弘 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授 (00273003)
三浦 直樹 東北工業大学, 工学部, 講師 (70400463)
河内山 隆紀 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (90380146)
星野 孝総 高知工科大学, 工学部, 准教授 (10351321)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 脳機能イメージング / 計算論的解剖学 / 古人類学 / 認知科学 |
Research Abstract |
我々の研究目的は、この領域研究全体の仮説である「旧人と新人の交替劇の原因は両者の学習能力差にあった」を、旧人のCTデータから化石脳を復元し新人の脳と比べるという比較解剖学的アプローチと現代人を対象とした脳機能マッピングを組み合わせて用いることにより、神経科学の観点から実証的に検証することである。 平成25年度は、現代人脳機能マップの作成に関しては、これまでに引き続き創造的社会の形成と維持の観点から社会能力や言語能力の基礎に関する神経基盤を調べる実験をおこない、その成果の一部を研究会・学会・論文などで発表した。またこれに平行し、学習能力差に関与すると考えられる認知コンポーネントのメタアナリシス解析を開始した。具体的には、心の理論やメタ認知、ワーキングメモリ等の神経基盤について調べ、その一部を研究会で発表した。これについては来年度も引き続き行い、旧人と新人の脳形態差との関連を調べる予定である。 一方旧人のCTデータをもとに頭蓋骨さらには化石脳を復元する研究においてはC01班と協力しながら研究を進めてきたが、今年度これらのCTデータと現代人MRIデータを同一プラットフォームで取扱いなおかつ比較できる手法が一応の完成を見た。今年度は、我々が最初に復元を手がけたアムッド1号の化石頭蓋破片のCTデータから頭蓋骨を複数のやり方で補完し復元したものからエンドキャストおよび化石脳の推定をおこない、同じく現代人MRIから作成したエンドキャストや脳を用いて両者の統計的比較検討をおこなった。この結果は、来年度の国際学会で発表予定である。また現在入手できたネアンデルタール人の頭蓋骨CTについても順次コンピュータ上で再構成をおこなっており、来年度にはこれらを含めた比較解析が出来ると考えている。これらをもとに学会発表や論文の作成をおこなう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度当初にだいたいの最終目的に向けた方針を決定した。我々の研究の2つの軸の1つである脳機能イメージング手法を用いた現代人脳の機能地図作成については、「創造性とそれを受容する社会(を担う能力)」という切り口から研究を進めている。具体的には創造性を維持し発展させる能力としての社会性、なかでも共感や共同注意、自己認知にかかわるもの、および言語とその使用に関わる神経メカニズムの実験を進め、その研究の幾つかは論文として報告したり研究会や学会などで報告することができた。我々はコミュニケーション中の2人の脳活動の同時計測研究を重視し、これまでに共同注意や意図の共有についての神経基盤の解明を主に機能的MRIを用いて進め成果を発表してきたが、脳活動の同調をより詳しく調べるため今年度は時間解像度の優れた脳波を用いた研究を新たに開始した。当初は今年度中に機能的MRIでおこなった実験の脳波計測版実験を終了している予定であったが、実験室セッティングと予備的調査(実験)に時間がかかり、この部分のみ若干進捗が遅れている。しかしながら現在では実験者の手技もあがっており予備実験も終了し本実験に入ったので、この遅れは取り戻せると考えている。 ネアンデルタール人の頭骨CTから化石脳を推定する研究では、当初の予定通りネアンデルタール人アムッド1号のデータを使って実際に化石脳を推定しコンピュータ上で復元するところまで完成した。この一連の成果に関しては、研究会や学会およびプロシーディングスというかたちで発表できた。アムッドに続けて現在は新たな旧人頭蓋CTより化石脳復元を試みている。加えて本年度は対照となる現生人類のMRIデータベースの構築も完成した。これにより旧人と新人の脳形態差を直接定量的に比較できる見通しが立ち、すでにpreliminaryな解析も終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度がプロジェクトの最終年度となるため、これまで二本の軸でおこなってきた研究のそれぞれの纏めと、それらの統合に取り組む。まず現代人の脳機能マップの作成研究では、これまでに引き続き社会能力関連の神経基盤解明のための機能的MRI実験をおこなう一方、旧人と新人の運命を分けたコアな心的基盤として他班と協力しながら探ってきた候補、社会性の他にワーキングメモリやメタ認知について、それらに関わる神経基盤の抽出を主にメタアナリシスを通して進めていく。また社会性の基盤として我々が最も重要と考えている共同注意に関しては、昨年度に引き続き脳波を指標とした実験もおこない、その神経メカニズムの時空間的マップの詳細を明らかにする。 一方ネアンデルタール人の頭蓋骨CTからの化石脳復元と新人の脳との定量的形態比較研究においては、既に完成している1つに加えて2つの新しい旧人頭蓋CTと、さらにネアンデルタールが生きた時代の新人頭蓋CTについてC01と協同で化石脳復元をおこない、我々が作成した512人の現代人脳データベースから作成した平均脳との定量的比較をおこなう。この比較をする解析プラットフォームは上記脳機能イメージングデータをそのまま用いることができるため、機能地図の化石脳への写像も合わせておこなう。また脳形態の差があった場所を特定し、その部位に関わる脳機能のうち、我々の仮説として妥当性のある機能の推定もおこなう。これはreverse inferenceと言われ通常の脳機能イメージング研究では決しておこなわないが、今回のプロジェクトの研究の特殊性と可能性を広げるため、この方法も採用する。これにより機能と形態の両面から我々が立てた学習仮説の最終的な検証をおこなう予定である。
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Research Products
(21 results)