2011 Fiscal Year Annual Research Report
内部欠陥構造発展の大規模計算によるバルクナノメタルの力学特性解析
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
22102007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (40361977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 吉輝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究員 (70433737)
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Keywords | 力学特性 / 計算力学 / ナノ材料 / 分子動力学法 / 結晶塑性解析 / 格子欠陥 / 粒界 / 破壊じん性 |
Research Abstract |
平成23年度は,昨年度に引き続き粒界の転位源としての役割に注目し,さらに粒界の破壊や格子転位の力学場に対する粒界の影響について注目し,以下の事項について研究を進めた. 【1】準安定構造の粒界転位源能力や余分な格子転位を含む粒界の転位ピンニング効果について検討し,準安定構造は最安定構造に比べて転位源能力が高いことを示した.また,原子モデルにより双結晶モデルに対して様々な応力状態下における粒界から転位が放出する現象を検討することで,超微細粒材の示す引張/圧縮降伏応力の違いは粒界から転位が放出する現象の静水圧依存性,さらには起動しようとするすべり面の垂直応力依存性,に起因している可能性があることを示した. 【2】バルクナノメタルの破壊現象を理解するために,粒界き裂の破壊現象を分子動力学シミュレーションにより解析を行い,粒界き裂の破壊現象を検討し,き裂先端の粒界領域から転位が放出する現象が破壊じん性値を向上させる可能性を示した.また,粒界型応力腐食割れを表現する結晶塑性モデルを用いて,結晶塑性有限要素法(FEM)解析および酸素反応-拡散有限差分法(FDM)解析を連成して行い,結晶粒径に依存した粒界型応力腐食割れ挙動について検討し,材料の力学特性および粒径は,き裂進展の開始のタイミングおよび速度に影響を与えることが示唆された. 【3】結晶粒サイズと転位の自己エネルギーの関係を調べるために,転位の応力場に対して,その近傍に存在する粒界の影響について準連続体法を用いて検討した.粒界の弾性定数が結晶相の弾性定数よりも十分小さい場合(約20%程度),転位の応力場は粒界領域により遮蔽され,転位の自己エネルギーは粒径に依存することが理解できた.しかしながら,金属材料中の粒界の弾性定数は今回検討したような小さな値を持つことはないため,原子モデルにより,粒界における応力緩和を今後考慮する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者が平成24年2月より所属機関を移動することに伴い,研究分担者が所属していた機関で雇用していたポスドクが,平成24年1月から全く別の研究期間に移動するため,粒界転位源能力に関するデータの取得がやや遅れたが,その後,粒界転位源能力を評価する計算を自動化することにより,当初の計画通り順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度に引き続き粒界の転位源能力について,より一般的な知見を獲得することを目指し,さらに結晶塑性モデルに原子モデルにより得られる粒界の転位源能力の情報を反映させ,バルクナノメタルの示す力学特性を表現できる力学モデルの構築を目指す.具体的には,以下の通りである.【1】粒界の塑性変形伝ぱ能力について,粒界方位差依存性について原子シミュレーションを用いて検討する.このとき,転位が粒界にまず侵入し,その後,放出されるため,粒界方位差のみではなく,粒界構造の依存性についても検討する.【2】結晶塑性モデルの構成式に組み込めるように,粒界転位源能力の「粒界方位差依存性」と「静水圧依存性」について原子モデルを用いて整理する.【3】結晶塑性モデルにおいて粒界領域の取り扱いについて検討する.特に粒界厚さの表現方法や,粒界面を介した塑性変形伝ぱ能力の表現方法について議論を加えていく.【4】転位の自己エネルギーと粒径の関係について検討するために,原子モデルを用いて粒界構造を表現し,粒内のフランクリード源の張り出し応力に対するフランクリード源と粒界までの距離の関係を検討する.
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