2012 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of mechanical properties of bulk nanostructured metals by large-scale computing on the defects evolution
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
22102007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (40361977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 吉輝 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70433737)
都留 智仁 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究員 (80455295)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 力学特性 / 計算力学 / ナノ材料 / 粒界 / 原子シミュレーション / 結晶塑性解析 / 破壊じん性 / 寸法効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24年度は,バルクナノメタルの変形・力学特性に対する粒内転位源と粒界転位源の関係に注目し,以下の事項について研究を進めた.【1】パイルアップモデルに対して粒内転位源と粒界転位源の寸法・構造依存性を考慮し,実験で報告されている強度と粒径の関係を表現できるモデル化を行った.そこでは転位が粒界を通過する抵抗が粒界方位差と共に大きくなる仮定を用いるが,その定量的な評価と詳細なメカニズムを原子シミュレーションにより確認し,粒界方位差のみならず粒界転位構造と格子転位構造の関係が,転位が粒界を通過する現象には重要であることを示した.【2】粒内にFrank-Read源を配置したサブミクロン粒で構成される多結晶体モデルの変形解析を大規模原子シミュレーションを用いて実施し,粒内転位源,粒界転位源から転位が放出する現象と粒界を転位が通過する現象を調査した.結果として,それぞれの現象を生じるために必要な応力の大小関係が,転位源の長さや粒界構造に強く影響を受けることを確認し,バルクナノメタルの強度を律速するメカニズムが内部構造に応じて変化することを原子モデルで表現できた.【3】分子動力学シミュレーションにより様々な外力負荷下において粒界から転位を放出させ,そのときの起動するすべり面に作用する垂直応力が,粒界から転位を放出するために必要な臨界分解せん断応力に強く影響を与えていることを確認した.この結果を,粒界転位源能力を考慮した結晶塑性理論に適用し,結晶粒が小さいほど強度の静水圧依存性を示せることが確認できた.また,ナノインデンテーションにより粒界の特性を反映した力学応答を獲得し,これらの情報を反映させた結晶塑性モデルの構築も行った.【4】粒界き裂近傍の粒界から転位が放出する現象と破壊じん性の関係を原子シミュレーションにより検討し,さらにこの現象を破壊力学の枠組で表現できるように理論を構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関連する新たなバルクナノメタルに関する実験事実が報告され,本研究を遂行する上で,さらに大規模な原子シミュレーションを用いて,粒界の塑性現象を直接考慮する多結晶体の変形シミュレーションを実施し,そこで得られる「拘束空間における転位の発展」と「粒界を介した塑性変形の伝ぱ」という複雑な格子欠陥の相互作用の検討を通じて,バルクナノメタルの降伏現象を解析することが必要になったため,平成24年度に大規模原子シミュレーションを取り扱う能力を有し,格子欠陥の数値解析に熟知している研究分担者を1 名追加した.そのため,新たな実験結果を数値解析を通じて検討する環境はさらに整備され,当初の予定を遅らせることなく順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,以下の事項について検討する.【1】原子モデルを用いて,ねじり粒界の転位源能力について検討し,一般的な粒界の転位源能力の評価に拡張する.【2】粒界構造に注目して転位が粒界を通過するときの抵抗力を原子モデルにより定量的に評価する.【3】Frank-Read 源の原子モデルの作成方法において刃状転位の端をピンニングするスキームを検討し,粒内転位源を持つ多結晶原子モデルを用いて,粒内転位源から発生した転位が粒界を通過する現象や粒内転位源が起動せずに直せず粒界から転位が放出現象を検討し,バルクナノメタルの降伏現象や強度の粒径依存性について検討する.【4】これまで得られる粒界の転位源能力や粒界の転位通過抵抗力の結果を(原子シミュレーションに加えてナノインデンテーションを用いた実験値も用いる),平成24 年度までに開発した結晶塑性モデルに組み込むことで(例えば,硬化則に粒界方位差に依存した転位の放出能力を導入する), 個々の粒界構造を反映したマルチスケール結晶塑性モデルを構築する.
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