2013 Fiscal Year Annual Research Report
内部欠陥構造発展の大規模計算によるバルクナノメタルの力学特性解析
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
22102007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (40361977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青柳 吉輝 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70433737)
都留 智仁 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究員 (80455295)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 力学特性 / 計算力学 / ナノ材料 / 粒界 / 原子シミュレーション / 結晶塑性解析 / 寸法効果 / 転位 |
Research Abstract |
平成25年度は,昨年度に引き続きバルクナノメタルの変形・力学特性に対する粒内転位源と粒界転位源の関係に注目し,以下の事項について研究を進めた. 1) Frank-Read源による転位の増殖過程を原子モデルにより表現した.張り出し間隔をLとしたとき,L=4nmという微小FR源においても臨界せん断応力は,LlnL^-1で表現できた.また,粒内転位源と粒界転位源の臨界せん断応力について,その非すべり応力依存性について比較した.粒界から転位が放出する現象の方が,強い非すべり応力依存性を示した.この現象は,すべり面間距離の変化に注目することで整理できることを見出した. 2) 三次元多結晶モデルを用いた引張解析を大規模原子シミュレーションを用いて実施し,転位密度が初期降伏応力に大きく影響することがわかった.そして,粒内転位の方位による偏りが粒毎のSchmid因子を低下させ,不均質性を示す要因となり降伏点降下などのBNM特有の機械特性に大きく影響することを明らかにした. 3) 金属における間欠的な塑性変形を調べるために,Cu, Ni, Al金属の単結晶モデルの引張シミュレーションを実行し,べき乗則をともなう間欠的な塑性変形現象を再現した.CuおよびNiでは,Alよりも大きなべき指数がえられた.原子スケールでの観察から,CuおよびNiでは転位雪崩運動が観察されたが,対称的に,Alでは結晶内に自己形成された欠陥構造クラスターに転位がトラップ/リリースされる挙動が見られた. 4) 転位源の情報を考慮した結晶塑性モデルを用いたFEM解析をARB加工によって創製された超微細結晶粒金属を想定して行い,結晶方位や粒形状が降伏挙動に与える影響について検討した.結晶方位および粒形状は超微細結晶粒材料の降伏挙動(上降伏点,下降伏点)に影響を与え,また,加工硬化やマイクロバンド形成にも影響を与えることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,原子モデルにより粒界から転位が放出する現象の非すべり応力依存性を表現できる構成式を提案し,結晶塑性解析に適用できる枠組を構築できているため.
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Strategy for Future Research Activity |
【1】原子シミュレーションを用いて,ねじり粒界の転位放出能力を検討する.また,傾角粒界とねじり粒界を 組み合わせ,一般粒界を計算機内で表現し,その塑性現象についても検討を加える. 【2】転位と粒界の相互作用を,粒内転位源(フランクリード源)を含む双結晶モデルを用いて原子シミュレー ションにより検討する.粒内転位源と粒界転位源を起動させる臨界応力の関係から,降伏現象に表れるサイズ効果を検討する. 【3】粒内に転位源を有する三次元多結晶モデルの変形に対する大規模原子シミュレーションを行う.まず,Al とCuに対して同様の変形解析を行うことで積層欠陥エネルギーの違いが粒界を介した変形に与える影響を検討す る.また,各粒の応力ひずみ関係を詳細に分析し,転位の可動性が均質でないBNMのマクロな降伏現象を定量的 に議論する.次に,引張り圧縮解析によりBNMで観察されるバウシンガー効果のメカニズムを明らかにすること を目的とする. 【4】離散的転位挙動を連続体モデルとして結晶塑性モデルに考慮したマルチスケールに結晶塑性モデルにおい て,分子動力学シミュレーションの結果から得られた粒界の特性に基づいて粒界転位源モデルを精密化する.本 モデルを用い,実験から得られる実際の結晶方位と粒形状の情報を解析モデルに反映させて解析を行うことによって,結晶粒径に依存した降伏挙動の変化や引張・圧縮非対称性などのバルクナノメタルの特異な力学特性について検討する.
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