2013 Fiscal Year Annual Research Report
密度汎関数法理論に基づく非平衡ナノスケール電気伝導ダイナミクス
Project Area | Materials Design through Computics: Complex Correlation and Non-equilibrium Dynamics |
Project/Area Number |
22104007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 聡 東京大学, 工学系研究科, 教授 (00292772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 一之 東京理科大学, 理学部, 教授 (50221685)
相馬 聡文 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20432560)
小野 倫也 筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (80335372)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 計算物理 / 物性理論 / 密度汎関数法 / 電気伝導 / ナノスケール物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナノスケール電気伝導のダイナミクスおよび電気伝導と諸要素(バイアス電圧の時間変化、光、スピン、原子ダイナミクス等)との絡み合いについて、計算による解析を進めている。また、実際の系に即した複雑な構造や状況に対する解析や、大規模系に向けた計算コードの開発・改良も進めている。平成25年度の主な成果は以下の通りである。 (1)単分子架橋の交流応答特性の解析を本格的に進め、金属カーボンナノチューブでは見られなかった特徴が現れる場合を見出した。(2)量子ドットの過渡応答特性を電子間相互作用を考慮して解析し、電圧印加速度によって到達する定常状態が異なるという興味深い結果を得た。(3)歪みを印加した領域と印加されていない領域の間の界面に発生する擬似的な磁場に起因する影響をグラフェンを用いた電界効果トランジスタ(FET)に対して解析し、歪の印加により通常のFETと比較して優れたスイッチング特性が得られることを明らかにした。(4)シリセンナノリボン(SiNR)からのレーザー刺激電界電子放射機構について時間依存密度汎関数法により解析した。予想に反する結果を得、その解析からSiNRはレーザーによる電子励起が電子放射に本質的な役割を果たす系であることを明らかにした。(5)ポテンシャル面の交差点近傍での非断熱結合係数の計算コスト低減・精度向上の手法開発を行った。(6)ナノスケール電気伝導特性の計算を大規模系に対して行う場合にGreen関数の計算がネックとなる問題に対し、同じ新学術領域研究内の張班と協力し、Green関数の計算手法としてShifted CG法を小野らが開発したRSPACEに組み込んだ。エネルギーのサンプル点数が50点のときに約22倍の高速化を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績欄に記した以外にも多くの成果を得て、交付申請書に記載した(1)時間変化電磁場への応答、(2)スピンとの相関、(3)原子ダイナミクスとの相関、(4)量子伝導特性計算の基盤コードの開発とデバイスシミュレーションのいずれの項目についても、プログラム開発と計算・解析が進んだ。これにより、(1)~(3)はいずれの項目でもナノスケール電気伝導ダイナミクスについての理解を深めることができ、(4)では大幅な高速化を達成した。よって全体として順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
交流応答特性について、金属カーボンナノチューブと単分子架橋の両方の結果を照らし合わせて考察し、ナノ構造一般に関する交流応答特性の包括的な理解を得ることを目指す。 光応答、スピンとの相関、原子ダイナミクスとの相関、といった他の項目についても、本研究の最終年度になることに鑑み、研究期間全体の成果を踏まえて考察し、ナノスケール電気伝導ダイナミクスに対する包括的な理解を得ることを目指す。
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Research Products
(58 results)