2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Materials Design through Computics: Complex Correlation and Non-equilibrium Dynamics |
Project/Area Number |
22104012
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 和則 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60379097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
野崎 隆行 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60452405)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | スピンエレクトロニクス / 第一原理計算 / 磁気異方性 / 計算物理 / 磁性 |
Research Abstract |
H25年度は、半導体スピントロニクスのマテリアルデザインに関連して、LiZnAsベース磁性半導体のキュリー温度の計算、GaMnNにおけるMnのハバードUパラメータの計算、Cr添加GeTeにおけるヨウ素の同時ドーピングのデザインをおこなった。n型にドープしたLiZnAsベース磁性半導体では100K程度のキュリー温度が予測された。これは現在までに発見されているn型強磁性半導体のキュリー温度の最高値34Kに比べると高く、合成実験を実施する価値がある。GeCrTeの系においてはヨウ素の同時添加が固溶度の上昇に寄与することを示した。また、GaMnNにおけるMnのハバードUパラメータを第一原理から決定し実験的に決定されているUと矛盾しない値を得た。 金属系スピントロニクスのデザインに関しては、相対論的2成分擬ポテンシャル第一原理電子状態計算法を用いた外部電界下での磁性薄膜の研究を継続している。本年度は、MgO/Fe(1-x)CoおよびMgO/Au/Fe(001)の界面の研究を行った。Fe(1-x)Coの計算においては、界面における面直磁気異方性の観点からCoがあまり重要な働きを行っていないことが明かとなった。磁気異方性とその電界効果におけるAu偏析の効果については、Au 2原子層がMgO/Fe界面に挿入された場合は、MAEに電界効果が表れないこと、およびAu 1原子層が挿入された場合には、比較的大きな電界効果が表れることが示された。この計算結果と鈴木義茂グループの実験との整合性はよい。また電界印加の第一原理分子動力学の高度化の準備にも取りくみ、vdW-DFT法の実装とテスト計算を行った。実証実験としては、MgO2重障壁構造における電圧磁気異方性制御、CoFeB/MgO接合の電界誘起磁気異方性変化におけるバッファ層依存性に関する検証実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
半導体スピントロニクスについては、新物質としてn型LiZnAsベース磁性半導体を提案しこの系が比較的高いキュリー温度が達成できる可能性があることを示した点が評価できる。従来n型の磁性半導体では30K程度の低いキュリー温度を持つ物質しか知られておらず、高いキュリー温度をもつn型強磁性半導体の合成は半導体スピントロニクデバイスの実現に大きな意味を持つ。 LDA+U法は局所近似の誤差を補正する簡便な方法として用いられるが、Uパラメータを実験とあうように決定するため第一原理計算と呼ぶには難があった。しかし、LDA+U以外のbeyond-LDA手法は一般に計算量が膨大で、数多くの系を計算する必要があるマテリアルデザインには不向きである。今回constraind-DFTの方法が磁性半導体におけるUパラメータの決定に有効であることを示したが、今後の磁性半導体のデザインをLDA+Uの範囲内で第一原理的に実行することが出来ることを示した点が評価できる。 金属系スピントロニクスについては、当初より計算によるデザインと実証実験がうまくかみ合って研究が進んでいる。とくに、本年度に実施したMgO/Au/Fe(001)の界面の研究では、Auの偏析の問題に焦点を当てた磁気異方性電界効果について議論がすすみ、検証実験と理論計算との整合性が非常によい結果が得られた点が評価に値する。 また、MgO2重障壁構造における磁気異方性変化の検証実験が進み、高い垂直磁気異方性と大きな電圧効果の両立が可能であることが実証された。また、CoFeB/MgO接合における電圧誘起磁気異方性変化のバッファ層依存性の実験検証では、CoFeBおよびMgOの構造変化による電圧誘起垂直磁気異方性変化の極性の変化が示唆されたが、この結果は同じ材料であっても構造制御によって効果の符号を自由に設計できる可能性を示しており、電圧効果の自由度を広げる結果となったことが評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
半導体スピントロニクス材料のデザインについて多階層連結シミュレーターを開発してきているが、H26年度は格子緩和等の影響が大きい系に対応するためにクラスター展開の方法を用いたシミュレーターを完成する。電子状態についてはスーパーセルを用いて構造最適化を行い局所的な構造の緩和を取り入れた計算を行う。具体的な系としては、遷移金属の固溶度が高いIV-VI系(GeTe)やII-VI系(ZnTe)およびカルコパイライト型半導体ベースの磁性半導体で自己組織化を利用したマテリアルデザインを行う。得られた構造に対して3次元系オーダーN計算コードの適用を検討する。さらに、同時ドーピングの効果に注目し自己組織化の制御法をデザインして実証実験を提案する。 金属系スピントロニクスのデザインについては、外部電界下での磁性薄膜の磁気状態を、密度汎関数理論に基づいた相対論的2成分擬ポテンシャル第一原理電子状態計算法、有効遮蔽媒質の方法によりシミュレートしその妥当性と有効性を検証する。H26年度は、これまでに行った物質デザインを発展させ、磁気状態の外部電界依存性について電界基板金属や磁性金属、誘電層材料を変えて物質依存性を研究する。金属基板はPtやAuの他にPd, Crなど、大きな垂直磁気異方性を有しながら、電界磁化反転において重要となる低ダンピング定数を実現可能と考えられる材料系の検討を行い、対応する実証実験を行う。誘電体についても、強誘電体BaTiO3やマルチフェロイックBiFeO3等について検討し計算を行う。磁性元素については、鉄、コバルト、ニッケルおよびそれらの合金について最適な組成設計を検討する。電界印加の第一原理分子動力学にファン・デル・ワールス密度汎関数法の機能を加え、計算手法の高度化を図る。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Valley filter by extraordinary Rashba spin on silicon2013
Author(s)
K. Sakamoto, T.-H. Kim, T. Kuzumaki, B. Müller, Y. Yamamoto, M. Ohtaka, J. Osiecki, K. Miyamoto, Y. Takeichi, A. Harasawa, S. D. Stolwijk, A. B. Schmidt, J. Fujii, R. I. G. Uhrberg, M. Donath, H. W. Yeom and T. Oda
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Journal Title
Nat. Commun
Volume: 4
Pages: 2073 (6 pages)
DOI
Peer Reviewed
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