2012 Fiscal Year Annual Research Report
Cleavage of unreactive bonds for asymmetric synthesis
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
22105005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 正浩 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20174279)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 触媒 / 結合活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な科学技術の確立に向けて、効率的な合成手法の開発が求められている。本年度は以下の3つの反応を開発した。いずれも不活性結合を活性化して進行する原子効率に優れた反応である。 N-アリールアゼチジノールに[Rh(OH)(cod)]2 (5 mol %) および DIFLUOROPHOS (12 mol %) を作用させるとキラルなインドリノールが高い収率、エナンチオ選択性で得られることを見いだした。ロジウムアゼチジノラートが生成した後、β炭素脱離によってアルキルロジウムとなり、1,4-ロジウム転位を経てアリールロジウムとなる。これがカルボニル基にエナンチオ選択的に付加したものと考えられる。 アミノ酸から合成した光学活性なN-アレーンスルホニルアゼチジノールに[Rh(OH)(cod)]2 (2 mol %) およびrac-xyl-BINAP (5 mol %)を作用させると立体選択的にベンゾスルタムが生成することを見いだした。ロジウムアゼチジノラートが生成した後、β炭素脱離によってアルキルロジウムとなる。1,5-ロジウム転位を経てアリールロジウムが生成し、これがカルボニル基にジアステレオ選択的に付加したものと考えられる。 シラシクロブタン部位がフェニレン基で連結されたシクロブタノンにCp(π-allyl)Pd (5 mol %)およびP(n-Bu)(1-Ad)2 (10 mol %)を作用させると、炭素-炭素σ結合と炭素-ケイ素σ結合の間でメタセシス型反応が進行して5-シラオクタノンが生成することを見いだした。シラシクロブタンおよびシクロブタノンの連続的な酸化的付加によってパラダサイクルが形成された後、炭素#8211;ケイ素結合の還元的脱離によるシラインダン骨格の形成、炭素-炭素結合の還元的脱離によるシラオクタノン骨格の形成を経て進行しているものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画のとおり、ロジウム触媒を用いたN-アリールアゼチジノールからキラルなインドリノールへの不斉骨格再構築反応、光学活性なN-アレーンスルホニルアゼチジノールからベンゾスルタムへのジアステレオ選択的骨格転位反応を開発することができた。加えて、パラジウム触媒を用いた炭素-炭素結合と炭素#8211;ケイ素結合のσ結合メタセシス反応の開発など、当初の予定にはなかった反応を見いだすことができた。これらの結果は現在、論文投稿中、もしくは執筆中である。これらを踏まえて「②おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
持続可能な科学技術の確立に向けて、効率的な合成手法の開発が求められている。今後もこれまでに得られた知見をさらに押し進めることで、不活性な結合の活性化を経る新反応をデザインし、合成実験を実施する。さらには、開発した反応を活用した有用物質や新規物質の効率的な合成戦略を提案、実現していくことで、反応の有用性を示すとともに、物質合成の新基盤を開拓していく計画である。また、以上のような合理的戦略に基づいて新技術を着実に開発する一方で、合成実験を実施するなかで、予想していた反応や既存の反応のみならず、まったく予想だにしなかった説明のできない結果が得られることもある。これらを見逃さず、その新規性、有用性について随時検証していくことで、研究の新展開の可能性を探る計画である。
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