2012 Fiscal Year Annual Research Report
Efficient Transformation of Hydrocarbons Based on the Development of Designed Reactive Species
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
22105006
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩澤 伸治 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40168563)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 有機化学 / 合成化学 / ピンサー錯体 / 脱水素ボリル化 / 求電子的活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、PSiPピンサー型パラジウム錯体を触媒とするアルケンの脱水素ボリル化反応の反応機構について詳細な検討を行った。まず、既に合成単離に成功し、ヒドリドパラジウム錯体等価体として機能することが明らかとなっているη2-(Si-H)Pd(0)錯体とジボロンとの反応を1H NMRで追跡した結果、反応初期段階ではトランス五配位錯体が主生成物として観測され、反応開始30分後を境に、これが徐々にシス五配位錯体へと変換されることが判明した。また五配位ボリルパラジウム錯体の構造はそれぞれX線結晶構造解析により決定し、単離した五配位錯体の熱的な異性化は非常に遅いことがわかった。そこでそれぞれのボリルパラジウム錯体に対して、等モル量のピナコールボランを室温下作用させたところ、トランス錯体はジボロンを生成しながらシラン配位錯体へと速やかに変換されることが明らかとなった。以上の結果から、シラン配位錯体とジボロンとの反応では、まず速度論的に有利なトランス錯体が生成するが、本反応は可逆であり、シラン配位錯体がヒドリドパラジウム錯体へと変換された後、熱力学的により安定なシス錯体が最終的に得られることを明らかにした。 さらに、PSiP錯体の中心元素の異なるPGeP及びPSnPピンサー錯体の合成を行い、その構造、ならびに反応性に関し検討を行い、PGePピンサー型パラジウム錯体の熱的安定性が大幅に向上すること、PSnPピンサー型パラジウム錯体が還元的アルドール反応の良い触媒となることを見出した。 また求電子的な遷移金属錯体を触媒として用いる反応開発に関しては、これまでに開発に成功した反応を基盤として有用天然有機化合物の全合成研究を継続して行うと共に、アレンの求電子的な活性化を契機とする高度に酸素官能基化された6,7員環化合物の合成を一般化することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は概ね順調に進行し、PSiPピンサー型錯体を用いた脱水素ボリル化反応の反応機構に関し非常に興味深い成果を挙げることができた。またさまざまな関連する錯体の合成にも成功し、それぞれ独自の性質を示すことを明らかにした。アルキンやアレン類の求電子的な活性化に基づく炭素骨格構築法の開発については、天然有機化合物の合成に一定の成果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には順調に研究は進展していると考えている。今年度見出した反応を確立・発展させるとともに、今後も新たな反応活性種の創出に基づく新反応の開発に重点を置き研究を推進する。大きな問題点はない。
|
Research Products
(27 results)