2013 Fiscal Year Annual Research Report
炭素―水素結合の直截的酸素化反応をめざした金属オキソ活性種の創出
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
22105007
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊東 忍 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30184659)
|
Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
|
Keywords | 炭素―水素結合活性化 / 酸素化反応 / 金属オキソ錯体 / 活性酸素錯体 / 反応機構 |
Research Abstract |
本研究では、金属酵素のストラテジー (戦略)を触媒開発に応用し、効率的かつ位置および立体選択的な脂肪族および芳香族化合物の水酸化反応の開発をめざして研究を行った。 (1) 新規な単核銅オキソ錯体の開発: 銅を含む一原子酸素添加酵素の中には、単核銅活性中心において分子状酸素を還元的に活性化し、各種有機基質の酸素化反応を効率よく達成しているものがある。本年度は、このような金属酵素活性中心に含まれる単核銅活性酸素種のモデル錯体の創成をめざして検討を行い、これまでに殆ど報告例のない単核の銅(II)スーパーオキソ錯体や、これまでに全く報告例のない単核の銅(II)オキシラジカルの創成に成功した。用いる配位子としては、A03班の後藤 敬教授(東工大院理工)らの開発した嵩高い置換基を導入した新規なボール型配位子を合成した。また、同様の配位子を用いてニッケル活性酸素錯体の創成にも成功した。 (2) 新規なオスミウム錯体を用いたオレフィンの触媒的酸化反応の開発: オスミウムを錯体化することにより反応性や反応の選択性を制御し、環境に優しく、より効率的な酸化触媒の開発をめざして検討を行った。その結果、オレフィンのジオール化やアミノヒドロキシル化反応における効率的な触媒として機能することを見いだした。また、A02班の森聖治教授(茨城大理)との共同研究により、DFT計算を用いた反応機構の解明にも成功した。 (3) 人工金属酵素の創成: 単核や二核の銅および鉄活性中心を有する人工金属酵素の創成をめざして、高熱菌由来のタンパク質を鋳型とする金属錯体の調製を行った。得られた金属タンパク質の結晶構造や分光学的特性を明らかにすると共に、基本的な酸化反応性を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1) 新規な単核銅オキソ錯体の開発: 当初の目的通り本年度は、銅含有酸化酵素活性中心に含まれる新規な単核銅活性酸素種のモデル錯体の創成を達成する事ができた。本新学術領域の重要な目的の一つである班員間での共同研究についても、A03班の後藤 敬教授(東工大院理工)らの開発した嵩高い置換基を導入した新規なボール型配位子を開発することに成功し、当初の目的が順調に達成されつつある。特に本年度の研究で得られた、単核の銅(II)スーパーオキソ錯体や、単核の銅(II)オキシラジカルはこれまでに報告例が殆どないもので有り、注目に値する。今後、さらに詳細な検討を積み重ねることにより、触媒反応への応用にが可能となるであろう。さらに、同様の配位子を用いて新規な単核ニッケル(II)オキシラジカル種の創成にも成功し、これについても触媒反応などへの応用が期待できる。 (2) 新規なオスミウム錯体を用いたオレフィンの触媒的酸化反応の開発: 新規なオスミウム錯体の調製法を確立し、オスミウムの錯体化学に道を拓いた。これにより、これまで未解明であったオスミウムの触媒反応を開発し、毒性の軽減や触媒回転数の劇的な向上を達成できた。また、A02班の森聖治教授(茨城大理)との共同研究により、DFT計算を用いた反応機構の解明にも成功し、新学術領域研究の目的も達成出来た。 (3) 人工金属酵素の創成: 当初の目的通り、高熱菌由来のタンパク質を鋳型として用いた銅および鉄活性中心を有する人工金属酵素の創成に成功し、構造や物性,反応性を明らかに出来た。また、長年の懸案であった二核銅中心を有するコウジ菌由来のチロシナーゼのX線結晶構造解析にも成功し、フェノール類の触媒的酸化反応機構の解明に道を拓いた。 以上のような結果から、当初の研究目的を十分に達成したものと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、平成26年度の研究計画に従って、目的を効率よく達成させるために研究を推進させていく。上述の研究により開発した、銅、ニッケル、オスミウム錯体を用いた効率的な触媒的酸素官能基導入反応の開発を行っていく。さらに他の遷移金属(コバルト、マンガン、ルテニウムなど)へも展開し、触媒の効率化をはかる。また、人工金属酵素については触媒への応用を行い、環境調和型酸化反応の構築をめざしていく。特に有機合成化学分野の研究者と連携をとり、触媒反応の応用についても検討を加えていく。
|
Research Products
(13 results)