2012 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis and Function of Highly Reactive Metal Complexes Capable of Activating Small Molecules
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
22105008
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川口 博之 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20262850)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フェノキシド錯体 / 前周期遷移金属 / ヒドリド錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
アリールオキシド基が2つとアニリド基を1つもつ混合型3座配位子[ONO]3-;を新たに設計、合成した。配位子のリチウム塩Li3[ONO]と塩化バナジウムVCl3(TH)3を1:1の割合で反応させると、 [(ONO)V(THF)] (1)が得られた。X線構造解析より、1はバナジウム3価の単核錯体であり、金属中心には[ONO]配位子が2つのアリールオキシド基と1つのアニリド基で3座配位子として結合し、さらに1分子のTHFが配位していることを明らかにした。バナジウム金属中心は四面体構造をもつ、常磁性のd2 V(III)錯体である。 錯体1と1倍等量のヒドリド試薬KBHEt3をTHF中、窒素雰囲気下で反応させると、ヒドリド錯体[K(THF)]2[(ONO)2V2(μ-H)2] (2)が得られた。反応過程で金属中心の酸化数は変化せず、錯体6では2つのヒドリド配位子がV(III)金属中心を架橋している。さらに、[ONO]配位子は2つの金属を跨ぐ形で結合し、2核構造を安定化している。 一方、ヒドリド試薬としてLiBHEt3を用い、同様に反応させると、水素ガスの発生をともないながら、[Li(THF)]2[{(ONO)V(THF)}2(μ-N2)] (3)が生成した。ヒドリド試薬としてKBHEt3を用いた場合とは異なり、反応過程でLiBHEt3は還元剤として作用している。X線構造解析より、窒素分子がend-on型で2つのバナジウム金属を架橋した2核錯体であることが明らかになった。各バナジウム中心は、3座配位子である[ONO]3-、THFがさらに結合することで四角錐構造をもち、窒素分子はbasal位の1つを占めている。架橋配位した窒素分子のN-N結合距離は1.211(5) Aである。窒素分子の結合距離(1.098 A)よりも伸長しており、N=N2重結合に近い値となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アリールオキシド配位子が高活性な金属錯体を合成するのに有用であることをこれまでの研究で明らかにしてきた。得られた前周期遷移金属錯体を反応場として用いることにより、新しい分子活性化反応を見いだしており、研究目的を順調に達成しつつある。以下にその成果の一部を示す。 例えば、本研究で合した [{Ta(OCOO)}2(μ-H)3][M(L)2] (1-M; M = Li, Na, L = THF; M = K, L = DME)ではヒドリド配位子をもつシクロメタル構造が共存しており、C-H結合活性化が可逆的に進行し、錯体1-Mは低原子価種の前駆体として働く。錯体1-KとMe3SiCHN2をTHF中、室温で反応させると、 [{(OOO)Ta}2(μ-N)(μ-NCH2SiMe3)]- (2-K)が得られた。これは、ジアゾメタンをニトリドとイミドへと変換した初めての例である。また、一酸化炭素を1-Kに作用させると、COの還元的カップリング反応が進行することも見いだしている。 一方、嵩高いアダマンチル基を導入したフェノキシド配位子(2,6-diadamantyl-4-R-phenoxide; RArO-. R = Me, tBu)を用いたジルコニウム錯体(RArO)2ZrCl2とKC8の反応では、溶媒としてもちいたトルエンが2つの[(RArO)2Zr]フラグメントに挟まれた逆サンドイッチ型構造をもつ錯体[(RArO)2Zr]2(C7H8) (3)が生成する。錯体3に有機アジドAdN3を作用させると、窒素分子の脱離を伴いながら、イミド錯体(RArO)2Zr(NAd) (4)が生成する。反応過程でトルエンが脱離することで、錯体3は配位不飽和な低原子価種として働くことが明らかになった。 以上に示した様に、様々な高活性金属錯体を合成、単離する手法を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究過程において、ヒドリド試薬を還元剤として使用してきたが、アルカリ金属塩等が副生し、化合物の単離・精製が困難な場合がある。そこで、アルキル錯体前駆体と水素ガスおよびヒドロシランとの反応から、ヒドリド錯体を経由した還元反応、活性種の発生法を検討する。また、副生成物であるアルカリ金属塩の混入を防ぐために、嵩高い置換基を配位子に導入する。シクロヘキシル基、ネオペンチル基、ベンジル基等の柔軟かつ嵩高い置換基を導入した配位子の設計・合成を行う。 補助配位子に関しては、低原子価状態を安定化できるリン配位子やN-ヘテロ環カルベンをアリールオキシド基とともに配位子骨格に組み込み、高原子価状態から低原子価状態まで幅広い酸化状態を安定化できる混合型配位子を設計・合成する。 上記で合成した配位子を基に、前周期遷移金属を中心に錯体を合成し、構造決定を行う。得られた前周期遷移金属錯体の各種スペクトル(CV, UV等)を測定し、その電子特性と結合状態を実験的に明らかにする。 さらに、新しく合成した金属錯体を反応場とし,安定小分子の活性化反応に取り組む。低原子価状態の前周期遷移金属錯体の2つの特徴―①エネルギー準位の高いd軌道に存在する供与性の強い電子、②ルイス酸性の高い金属中心―の相乗効果を利用することにより、無機小分子の変換反応を行う。例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、白リン(P4)、およびカルコゲン元素(S, Se, Te)等の活性化反応を調査する。特に、窒素分子の活性化に焦点を当て、集中的に取り組む。
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