2011 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属クラスター錯体の示す特異性の解明と触媒機能開発
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
22105010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
真島 和志 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70159143)
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Keywords | 二核金属錯体 / 不斉反応 / 水素化反応 / 複素環化合物 / 炭素-水素結合活性化 / 前周期遷移金属錯体 |
Research Abstract |
複核遷移金属錯体による触媒反応として、ハロゲン架橋二核イリジウム錯体を触媒として用いることにより、含窒素芳香環化合物の不斉水素化反応が極めて効率よく進行することを見出した。本触媒反応では、反応の進行につれて触媒機能(反応活性、不斉選択性)が大幅に向上することを新たに発見し、反応メカニズムに関する研究から触媒反応生成物であるアミンがイリジウム錯体中心と相互作用することにより高反応性化学種を生成することを明らかにした。また、反応中間体や触媒反応中から単離される失活種についても、それぞれ錯体を単離し、単結晶X線構造解析により、その構造を明らかにすることに成功した。このような不斉水素化反応における生成物と触媒金属中心の相互作用の重要性を明らかにした研究はこれまでになく、本知見を元にしてさらに高活性な触媒の開発に向けた研究を進めている。 さらに、前周期遷移金属アルキル錯体によるσ結合メタセシス反応を利用した炭素-水素結合活性化に着目し、カップリング反応への展開に関して研究を進めており、本年度はさらなる基質適用範囲の拡大を目的として含窒素複素環化合物以外の基質活性化に関する研究を進めた。その結果、通常は活性化されることのない内部アルキン類のプロパルギル位炭素-水素結合活性化が希土類金属錯体を用いて進行することを見出した。このような炭素-水素結合活性化反応は後周期遷移金属では見出されておらず、希土類金属特有の反応性を明らかにすることができ、触媒反応への応用に向けた研究へ展開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不斉水素化反応については、様々な複素芳香環化合物の水素化反応に向けた触媒活性の向上に成功し、本年度の知見を元により安定な基質に対する反応を検討している。また、前周期遷移金属触媒反応に関しても、従来のその他の金属では見られなかった特異な炭素-水素結合活性化に対する反応性を見出すことに成功し、触媒反応化に向けて研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題では、複数の金属種を有するクラスター分子を用いた反応開発に重点を置いており、特にハロゲン架橋イリジウム二核錯体について、その触媒性能として広範囲の複素芳香環基質へと展開する。また、触媒活性向上のための反応機構解析や活性種の単離にも注力しながら、二核錯体ならではの特殊な反応への展開を狙って研究を続ける。また、前周期遷移金属錯体についても、有機ルイス酸として典型元素化合物を加えると反応性が向上することを見出しており、前周期遷移金属-典型元素複合体を用いた反応開発に向けて研究を展開する。
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