2012 Fiscal Year Annual Research Report
Regulation of Reactivity of Highly Reactive Species by Utilizing Large Molecular Cavities
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
22105011
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 敬 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70262144)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機化学 / 物質変換 / 分子活性化 / 活性種 / 分子空孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体反応に含まれる反応活性種は、基質以外の分子の活性化にも有用と考えられ、未開拓の反応性の宝庫と言える。従来その不安定性のために、人工系での合成が困難であった生体反応中間体を安定に合成し、有効に活用することができれば、新たな分子活性化法が開発できるものと期待される。今年度、生体内において重要な役割を果たしている小分子の活性化についてモデル研究を行った。また、より生体内の環境に近いキャビティ型モデル分子の開発について検討した。近年注目を集めている活性窒素種ニトロキシル(HNO)とシステインチオールとの相互作用により生成するN-ヒドロキシスルフェンアミド(RSNHOH)は、特異な生理作用に関心が持たれているが、極めて不安定であるために実験的な情報がほとんど得られていない。今回、キャビティ型骨格を用いて安定に合成・単離したN-ヒドロキシスルフェンアミドの反応性を精査し、チオールやアミンに対しては生化学の分野で提唱されてきたものとは異なる反応性を示すことを明らかにした。また、これまで想定されていなかった新たな反応性として、チオールとHNOとの反応が可逆的であり、N-ヒドロキシスルフェンアミドが他のチオールに対してHNO供与体として機能することを見出した。これは、N-ヒドロキシスルフェンアミドがHNOの貯蔵および輸送に関与している可能性を示唆する重要な結果である。また、NOのチオールヘの付加体に相当する中間体であるチオニトロキシド(RSNHO・)のESRによる観測に、はじめて成功した。さらに、より生体内の環境に近いモデル系として、サイズを拡大したキャビティ内に、システインユニットそのものを導入した誘導体を開発し、システイン由来のS-ニトロソチオールの合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重要な生体機能をもつ活性小分子ニトロキシルの挙動について、鍵となる中間体の安定化を通して、その変換過程を実験的に明らかにすることに成功した。また、より生体内の環境に近いモデル系を開発し、それが有効に機能することを実証しており、ほぼ予定通りの進捗状況と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生体反応活性中間体の研究を引き続き進展させるとともに、その有機分子触媒としての活用を図っていく。さらに、新規な空孔型カルベン配位子の開発と、それを活用した空気中からの二酸化炭素固定反応の開発および反応機構解析について、共同研究を含めて展開していく。
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