2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
22105013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 高史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20222226)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | タンパク質 / 酵素 / 有機金属触媒 / 重合反応 |
Research Abstract |
生体内の触媒である酵素は、本来不活性あるいは低活性な分子を水中かつ温和な条件下において、選択的かつ迅速に変換しうる非常に優れた能力を示す。その理由は、酵素の基質結合部位で、基質あるいは基質と反応する小分子が幾つかのアミノ酸の協同効果によって効率的に活性化したり、基質分子の反応点の位置かつ立体が制御されながら反応が円滑に進行することに由来する。一方、同様な反応をいわゆる通常のフラスコ内で触媒非存在下において進行させる場合には厳しい条件が必要であることが多く、さらに副反応も危惧される。そこで、タンパク質を利用して、新しい生体触媒を創製し、目的の基質を水中でスムーズに変換することは、興味深い研究課題と言える。 本課題研究では、上記の意義をふまえ、当該年度は主に、天然には見られない生体有機金属触媒の開発を行った。具体的には、一酸化窒素結合ヘムタンパク質としてよく知られているニトロバインディンを用い、そのタンパク質内に結合している補欠分子ヘムを除去して得られる空孔を、反応場として利用した。この空孔にロジウム錯体を導入し、新しいハイブリット触媒を合成した。得られた複合体の構造を質量分析、CDおよび結晶構造解析で詳細に同定し、構造を明らかにした。次に、フェニルアセチレンをモノマーとして水中で重合させポリアセチレンアセチレンを得た。 一般にタンパク質空孔が存在しない場合は、シス体のポリマーが優先的に得られるのに対して、このハイブリッド触媒を添加することにより、トランス体のポリマーが選択的に得られ、タンパク質空孔が生成物の立体の逆転を促すことが明らかとなった。また、タンパク質の空孔を形成するアミノ酸残基の変異を施すことにより、この生成物の立体を自在に制御可能であることも見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新学術領域「直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発」の主テーマの一つである反応場を駆使した新しい物質変換を目標とし、当該年度は生体有機金属触媒の創製に挑戦した。有機合成化学の分野において、有機金属化学は近年非常に発展し、有機金属錯体を用いた触媒開発は、様々な化学反応や医薬・化成品の製造に貢献している。しかしながら、生体内での有機金属種は非常に限られており、生物無機化学の分野では、ビタミンB12(アルキルコバルト錯体)のみである。一方、一般に酵素は、反応活性中心周囲のタンパク質マトリクスが、基質の活性化や生成物の立体をたくみに制御していることが知られている。したがって、本課題研究ではこの点に着目し、タンパク質の空孔を反応場とする全く新しいタイプの生体触媒(タンパク質と有機金属錯体のハイブリッド)を設計・構築し、その活性評価まで実施することが出来た。その途中では、合成や得られたタンパク質の精製にかなり戸惑うこともあったが、最終的には目的とする複合体を調製し、その同定と結晶構造解析を行うと共に、重合反応まで達成した。特に、得られたポリマーは通常のロジウム錯体で得られるポリマーと逆の立体構造を示し、タンパク質空孔の意義が明確に示され、まずは当初の目的を達成したと言える。本成果については、国内外で評価され、生物有機金属化学国際会議(トロント)での基調講演も行った。まだ、系としての改良の余地はあるが、研究はおおむね順調に進捗していると言える
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Strategy for Future Research Activity |
今後の主な課題は、当年度のポリマー合成において、現在trans体が8割の生成比を示しているが、さらにタンパク質空孔を形成するアミノ酸残基を変異導入によって変換し、より立体選択性の高い優れた触媒構築をめざしたい。タンパク質空孔を使うメリットは、自在に反応場の構造を遺伝子工学的手法を用いて改変できることにある。さらに、錯体側の金属や配位子を変えて、他の様々な有機金属反応を水中で展開する試みも可能である。たとえば、不斉水素化反応などは、是非とも実現したい課題である。 一方で、最終年度は、難易度の高い不活性炭素―水素結合の活性化にもチャレンジしたい。生体内で見られるC(sp3)-H結合の水酸化反応を、簡単なタンパク質空孔を有するアポミオグロビンと人工補因子の複合体を用いて、実現する試みも検討している。以上の研究を通じて、ユニークな反応場と金属錯体のコンビネーションによる直截的分子変換系の構築を提案したい。
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Research Products
(10 results)