2012 Fiscal Year Annual Research Report
Air-sea interactions with complex oceanographic structure over the marginal seas and their influence on marine ecosystem
Project Area | Multi-scale air-sea interaction under the East-Asian monsoon: A "hot spot" in the climate system |
Project/Area Number |
22106002
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
磯辺 篤彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (00281189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 准教授 (10322273)
石坂 丞二 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (40304969)
中村 啓彦 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (50284914)
木田 新一郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (50543229)
広瀬 直毅 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70335983)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 黒潮流軸と気象 / 黄海・東シナ海 / 日本海 / 瀬戸内海 / 同化プロダクト / 島法則 |
Outline of Annual Research Achievements |
黄海や東シナ海の海面水温分布が、特に弱風時において、直上の下層大気において傾圧性を高めること、そして、日本海で下層大気が傾圧性を高める時期と、黄海や東シナ海で高まる時期が一致する場合、日本近海において温帯低気圧が発達しやすいことを明らかにした(J. Climateにて公表)。黄海や東シナ海で適用できる大気-海洋結合領域モデルを開発し、冬季の中国大陸沿岸において、海面水温と局地風の相互作用を発見した(J.Climateで改訂中)。また、日本南岸で黒潮が直進するか大蛇行するかで南岸低気圧の移動経路が変わること、さらにその影響は東京の降雪にも及ぶことを示した(J. Climateにて公表)。本計画研究班では、縁辺海での同化プロダクトの整備にも力を入れている。本年度は、間宮海峡までモデル海域を拡張するなど、同化システムを改良・強化した。また、対馬海峡を横断するフェリーに設置したADCPデータを用いて、総観規模の気象変化と対馬海峡の流量変動の典型的な関係を明らかにした。さらに小スケールである沿岸海域での研究にも、本班は成果を上げつつある。例えば、7月下旬と9月上旬に瀬戸内海西部で2回のゾンデ観測を実施した。ゾンデ観測の結果から、潮汐フロントに伴う水温勾配、および季節変化に伴う海面水温の変化が大気境界層の発達に与えた影響を確認できた。加えて、縁辺海における大気海洋の変動を理解するための理論的研究も進展を見せている。例えば、外洋と縁辺海の交換流を駆動するメカニズムを1.5層モデルを用いて検証した。これまでのIsland Ruleでは説明できなかった狭い海峡を通る交換流の流量が循環定理から説明できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画研究班は、縁辺海での大気海洋相互作用の実例を積み上げていくことを当初の目的とし、その後に海洋生態系をも含めた相互作用の発見にチャレンジしていくものである。これまで、黄海・東シナ海や日本南岸における相互作用環の発見に成功し、ハイレベルの国際学術誌に公表を進めてきた。記者発表を通したマスコミへの成果発表も行った(2012年9月25日/文部科学省記者クラブ)。冬季の中国大陸沿岸域における相互作用の発見は、海洋循環モデルを用いた研究へのインパクトが大きい。すなわち、冬季海面水温のモデルによる再現のためには、これまで考えられていたような海面冷却を強制するモデルでは不十分であって、縁辺海や沿岸海洋の研究においても結合モデルが必要である(少なくとも、そのような状況が存在する)ことを示すものである。さらに、現在では、日本海における春季プランクトンブルームに伴う海面水温の変化と、これによる大気応答についての研究に着手し、成果を上げつつある。同化プロダクトについては、潮汐から海流、あるいは水温から塩分まで、高い再現性が得られていることを確認した。瀬戸内海のゾンデ観測によって、瀬戸内海に存在する10数キロスケールの水温フロントが、大気境界層に影響を与えていることはほぼ確実との確信を得た。また、西岸境界流・交換流・島の三要素を結びつける基本原理を明らかにし、交換流量の推定式まで導出できた。これから行うより複雑な交換流の理解に必要な基礎ツールが準備できた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本海の春季植物プランクトンブルームによる海面水温変化と、これに伴う大気応答の研究を進展させ、中緯度縁辺海が大気-海洋結合系だけではなく、大気-海洋-生態系の結合系であることを証明する研究に挑戦していく。また、浅い黄海・東シナ海においては大気海洋相互作用環が成立しやすいとの、これまでの研究成果を踏まえ、季節進行に伴う海面水温の変化が、温帯低気圧の発達や風系に与える効果、そして、これが再び海面水温変化に反映されていく効果について研究を進めていく。あるいは、東シナ海の黒潮がその直上の大気に与える影響を、総観規模の大気状態ごとに分類して調べ、各々の大気状態での力学過程の共通点と相違点を明らかにする。瀬戸内海においては、水温フロントの効果に注目する。すなわち、瀬戸内海での水温フロントは強い季節性を持つため、大気への影響も強い季節性があるだろう。また、水温フロントの存在は大気境界層のみならず、海陸風の空間変化にも影響を与えるだろう。今後、数値モデルとデータ解析より、この2点を明らかにする。同化プロダクトの整備を更に進めていく。さらに、同化結果を分析することで、特に海洋の熱輸送を明らかにし、また、海面気圧変動に対する縁辺海の応答を調査する。あるいは、これまで構築してきた理論を基に、日本海と北太平洋間の水塊交換(対馬・津軽海流)の理解を進める。また大気の変動成分が交換流にどのように作用するのかを検証する。
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Research Products
(28 results)