2012 Fiscal Year Annual Research Report
雲・放射エネルギーを介したモンスーンアジアの大気海洋相互作用
Project Area | Multi-scale air-sea interaction under the East-Asian monsoon: A "hot spot" in the climate system |
Project/Area Number |
22106004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早坂 忠裕 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40202262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河本 和明 長崎大学, 環境科学部, 教授 (10353450)
村山 利幸 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (50200308)
岩崎 俊樹 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80302074)
坪木 和久 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授 (90222140)
江口 菜穂 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (50378907)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 雲 / 放射 / 大気海洋相互作用 / エネルギーフロー / モンスーン |
Research Abstract |
本年度は冬の日本周辺の下層雲と夏の北西太平洋の下層雲について、衛星データ解析を進めるとともに雲解像モデルCReSSによるシミュレーション結果との比較を行なった。得られた結果は次のとおりである。 冬の日本周辺の下層雲の特性について、CReSSによるシミュレーション結果とCloudSatの衛星観測データ解析で得られた雲粒子タイプ特性を比較した。日本海北部では過冷却水も含めた雲水粒子、雪、霰がレーダー反射強度に良く対応することが示された。また、東シナ海では雲水粒子、降水粒子が主な雲構成粒子だが、北緯30度以南でも霰が存在する。雲の幾何学的厚さはCReSSとCloudSatで良く対応しているが雲頂高度はCReSSが若干低い。 夏の北西太平洋の下層雲を対象に、MODISによる衛星観測結果と客観解析データを用いて雲微物理特性と海面水温、海上気温および海面における顕熱、潜熱フラックスの関係を調べた。その結果、三陸沖の下層雲(ヤマセ雲)は比較的雲量が少ないこと、海面水温が海上気温よりも高い場合と低い場合の両方の条件が存在することが示された。また、2011年7月末のヤマセ雲の事例についてCReSSを用いて二種類の水平解像度(水平1kmおよび400m)のシミュレーションを行った。全体的な下層雲分布の広がりの表現が高解像度化(400m)で改善されることが示された。MODIS衛星観測データとの比較で、低層雲の雲水量がよく再現されていることが示された。他方、雲頂温度についてはバイアスがあり、MODIS衛星観測データの方が温度が低い結果が得られた。 いくつかの事例についてシミュレーションと衛星観測結果を比較した結果、放射過程も含めた下層雲および下層雲を含む大気全体のエネルギーフローを定量的に評価することができた。特に上層雲が存在すると下層雲の雲頂における放射冷却が抑制されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿って、衛星観測データを用いた雲の微物理特性の解析と雲解像モデルCReSSを用いた雲のシミュレーションを行ない、冬の日本周辺および夏のヤマセ雲について定量的な比較をすることができた。CloudSatやCALIPSOのような衛星搭載能動型センサーの観測から雲粒子のタイプ別出現頻度を求め、CReSSによるシミュレーションと比較することができた。また、夏のヤマセ雲についてCReSSで計算した雲水量とMODIS衛星観測データによる雲水量を比較したところ、概ね一致した。この夏季下層雲のシミュレーションにおいて、CReSSは水平分解能を上げることが雲を再現する上で重要であることが示された。以上のほか、北太平洋全体の夏季下層雲の微物理特性と海面の顕熱、潜熱フラックスの比較も進んでいる。これらの解析に加えて、本年度は船舶観測が実施され、現在、その観測データを解析中である。 以上により、現在のところ、本研究は概ね当初の計画に添って順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、多数の事例についてCReSSのシミュレーションと衛星観測結果を比較するとともに、船舶観測の結果や地上観測データを用いて、放射過程も含めた下層雲および下層雲を含む大気・海面全体のエネルギーフローを定量的に評価する。また、これらのエネルギーフローと雲微物理特性の関係、さらに雲が海面の熱収支に及ぼす影響について解析を進める。大気海洋相互作用過程の詳細については、本年度の観測に加えて平成25年度も船舶観測が予定されており、それらの観測結果も合わせて解析を行なう。今までの3年間の本研究の結果から、夏季北太平洋の下層雲の微物理特性、雲の形成、維持機構と気象場、海面における熱フラックスの関係は未解明な点も多く、新たな研究課題へと発展する可能性もあると考えている。
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