Research Abstract |
2000年代に大気海洋相互作用研究な発展を遂げたのは,QuikSCAT衛星によって海上風が全海洋上で計測され,その収束発散および回転に明瞭に海洋の影響が見いだされたためである.しかし,この海上風応答のメカニズムについては,圧力調整メカニズムと鉛直混合メカニズムの二つの主要な仮説があり,合意が得られていなかった.我々は,新たな診断手法を開発し,それを領域大気モデルに組み込むことで,上の二つのメカニズムがどれだけ海上風の収束発散および回転に寄与するかを,定量的に明らかにすることに成功した.この診断手法では,従来行われていた単一高度の診断とは異なり,表面からある高度まで積分することで,応力の二つの側面,すなわち上空からの運動量混合と,表面摩擦によるダンピングを明示的に分けて扱うことができる.メキシコ湾流が大気にもたらす影響を調べるため,領域大気モデルを北大西洋について実行し,診断を行った.その結果メキシコ湾流上で,収束発散については圧力調整メカニズムが,回転については鉛直混合メカニズムが主要な役割を果たし,その相違は一般風の風向と,海洋表面水温フロントとの向きに依存するものとして理解することができた.また3時間間隔のGSMaP全球降水データを用いて,降水の日周期解析を実施し,日本付近の梅雨期およびメキシコ湾流の夏季に顕著な日周期変動を見出した.この日本付近の梅雨期の日周期変動は,レーダー・アメダスで得られた結果とおおむね整合的であった.
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