Research Abstract |
"hot spot"を特徴づける表層海洋・対流圏・成層圏の鉛直結合系を包括的に扱い,それが気候系の形成と変動に果たす実態とその役割を解明する目的の達成へ向け,以下のような成果を得た. 1)長期観測データの解析から,偏西風の持続的蛇行をもたらす冬季対流循環偏差が成層圏循環変動に与える影響の強い地理的依存性を見出した.従来の説とは異なり,シベリア高気圧の増幅に関わる北東シベリアの高気圧性偏差が,北極上空の成層圏を寒冷化させることを発見した. 2)「北極振動」に伴う鉛直結合変動が引き起こす水温・海流変動と,それが大気に与え得るフィードバックの解明へ向け,気象研究所大気海洋結合モデルの長期積分を実施したが,震災による計画停電で影響で大幅な遅延となった. 3)「南極振動」に伴う海上偏西風の変化と海洋渦活動・海流軸の経年変化との対応関係を海面高度計データや高解像度海洋モデル(OIFES)の出力データの解析から調査した.また,大気大循環モデルAFESの「水惑星」実験を水温前線の緯度の異なる条件で実施し観測される「南極振動」の特性と比較した. 4)現実的な大気海洋結合モデル(CFES)の長期積分を実施し,北太平洋大気海洋系の10年規模変動に関わる大気海洋相互作用の特性が,観測される変動特性をかなり良く再現できることを確認した. 5)平年の梅雨・秋雨前線と上空の亜熱帯ジェット気流,付随する擾乱活動,下層雲,積乱雲,降水の分布,それらに関連する下層の水蒸気量・成層安定性の分布について,海面水温やその南北勾配との関連性を,大気循環データや衛星観測データに基づき解析した.海洋の亜寒帯循環系の季節的昇温が遅れることを反映し,梅雨期の方が秋雨期より下層の成層安定度が高くて下層雲量が高いこと,盛夏期は日本付近の水蒸気南北傾度が高いものの擾乱活動が弱化するため降水量が低下することが分かった.
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