2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能性ペプチドによる融合マテリアルの精密設計と合成
Project Area | Fusion Materials: Creative Development of Materials and Exploration of Their Function through Molecular Control |
Project/Area Number |
22107005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳴瀧 彩絵 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (10508203)
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Keywords | ハイブリッド材料 / 機能性高分子 / 融合マテリアル / 生体材料 / 高分子構造・物性 |
Research Abstract |
タンパク質やペプチドは、厳密に定義された分子構造とそれに基づく高次構造を有する機能性分子であり、バイオミネラルの形成に最も直接的に関与する有機物質である。本研究では、生体組織に強靭さ・しなやかさを与える構造タンパク質(エラスチン・コラーゲン等)のコア配列に着目して、分子制御された融合マテリアルを構築する。遺伝子工学技術により、コア配列中に無機前駆体と相互作用するアミノ酸を組み込み、無機物としなやかなハイブリッド体を形成させる。さらに、異種有機材料との相互作用サイトの創出により、領域内で作製される合成高分子材料や有機組織体(液晶・ゲル等)との融合を行い、自然調和型構造材料・動的融合機能材料の創製を目指す。 本年度は、融合マテリアルの構築に用いる機能性ポリペプチドである、エラスチン由来ポリペプチドの水中における自己集合過程を詳細に検討した。このポリペプチドは、エラスチン由来の(Val-Pro-Gly-Val-Gly)_n(P-rich ドメイン)に同じくエラスチン由来の(Val-Gly-Gly-Val-Gly)_m(G-rich ドメイン)を連結したブロックポリペプチドである。両ドメインとも温度上昇により脱水和され、P-richドメインはβ-turn構造を、G-richドメインはβ-sheet構造をとりやすいことが知られている。このポリペプチドを水に溶解させて45℃に加熱すると、数日で柔軟なナノファイバーを形成する。今年度予算で購入した円二色性分散計あるいは各種顕微鏡法により、ファイバーの形成過程を調べたところ、ブロックポリベプチドはまずβ-turn構造をとって疎水性凝集し、その後、経時変化にともないβ-sheet構造を形成してナノファイバーを形成することが明らかとなった。また、ナノファイバー分散液を再び冷却すると、一部のナノファイバーが分解することも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
融合マテリアル形成のための構成要素となるエラスチンナノファイバーを再現性良く得ることに成功し、またその形成過程についての重要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
温度変化に対して安定なエラスチンナノファイバーを得るために、架橋反応が可能なリシン残基を導入したブロックポリペプチドを新たに作製する。架橋により安定化したエラスチンナノファイバーを生分解性ポリマーマトリクス中に複合化した融合マテリアルを作製し、再生医療のための足場材料としての利用を検討する。融合マテリアルの力学特性、および細胞親和性について評価をおこなう。
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