2012 Fiscal Year Annual Research Report
Creative Development of Fusion Materials by Design of Interfacial Functions
Project Area | Fusion Materials: Creative Development of Materials and Exploration of Their Function through Molecular Control |
Project/Area Number |
22107006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青島 貞人 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50183728)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 融合マテリアル / 刺激応答性ポリマー / リビングカチオン重合 / ブロックコポリマー / 交互ポリマー / スマートフィルム / 磁性細菌由来酸化鉄 / シリカナノ微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
24 年度は下記の3点に関して検討を進めた。 (1) 種々の側鎖構造を有する刺激応答性ポリマーの精密合成:刺激応答性/動的界面に利用可能な種々のモノマーのカチオン重合を検討し、水中ないし有機溶媒中で高感度に相分離やゾルーゲル転移する種々のリビングポリマーを得た。たとえば、UCST型相分離を示すポリマーを合成し、ブロックコポリマーの合成やその特異的なミセル化・ゲル化挙動を検討した。また、ブロックや星型ポリマーの新規合成法として見いだした “ドミノ合成法” やアセタール基から枝鎖を伸長してグラフトコポリマーを合成する手法をさらに検討した。一方、スチレン、アルケン系など、ビニルエーテル以外のモノマーの重合触媒も開拓した。 (2) シークエンスや形態の制御された刺激応答性ポリマー・フィルムの合成法の検討:新しい交互ポリマーとして、植物由来の共役アルデヒドとビニルエーテルから得られたポリマーは、分子量分布が狭く副生成物がない交互型リビングポリマーで、比較的温和な酸加水分解により低分子化合物まで完全に分解された。また、刺激応答性で分解可能なポリマーの精密合成も検討した。一方、温度応答性及びフィルム形成セグメントを組み込んだブロックコポリマーフィルムの温度応答挙動を検討した。その結果、異なる4パターンで応答性を示すスマートフィルム、複雑な応答パターンを示す温度応答性フィルム、高感度に応答するフィルムが創製可能になった。また、予備検討中であるが、刺激応答性ブロックコポリマーを用いた中空ナノ微粒子の創製、シリカナノ微粒子の環状配列制御の可能性を見いだした。 (3) 融合プロセスで得られた酸化鉄を用いた新しい重合:A02新垣、A03今井らとの共同研究により、天然の磁性細菌由来等の酸化鉄を用いて世界で初めてビニルエーテル類のカチオン重合を行い、構造や分子量の制御されたリビングポリマーが生成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで、構造や分子量の制御された様々な刺激応答性ポリマーが精密合成出来るようになり、シークエンスや形態の制御されたポリマーを用いることにより界面でのセグメント配列やモルホロジー制御の可能性も見出すことができた。一方、自然界に豊富に存在する「鉄」を用いて、天然の磁性細菌由来の酸化鉄や添加物存在下で特殊成長した新しい結晶構造の酸化鉄を用いたリビングカチオン重合や、疎水化させた磁性ナノ粒子と刺激応答性ポリマーを融合した磁場応答放出型リポソームも創製できた。また新たな例としては、まだ予備検討の段階であるが、刺激応答性ブロックコポリマーを用いた中空ナノ微粒子の創製、シリカナノ微粒子の環状配列制御の可能性が見いだされた。特に最後の2例は当初の予想以上の結果であり、目的とする「有機/無機界面でのセグメント配列やモルホロジー制御」による自然界にない新材料の創製につながる。いずれも当初の研究目的・計画からずれておらず、予定以上の達成度で研究は進んでいる。 また、24年度の領域全体の中間評価において、高い評価(A+)「設定目標に照らして期待以上の進展が認められる」をいただいた。現在、研究上で生じた大きな問題点は見あたらないが、さらにこの研究を進展させるために、中間評価でのアドバイス: (1) 構造のさらなる解析、(2) 材料の形成機構をはじめとする原理解明、(3) 機能ごとにテーマを整理した領域としての共同目標、に対応していきたい。(1)、(2)に関しては、表面解析や溶液中での集合体構造の研究者との共同研究、物理やシミュレーションの研究者とのディスカッションを進める予定である。(3)に関しては、領域内での「トピックス研究会議」に参加し、たとえば、酸化鉄に関する研究会議において、自然調和型プロセスと動的機能性バイオマテリアルの2つの方向での共同研究を促進する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 刺激応答性/自己修復・分解性を有する融合マテリアルの創製:これまで、様々な刺激応答性ブロックコポリマーが界面における動的/刺激応答性付与に重要であることを見いだした。一方、植物由来のアルデヒドを用いた交互共重合体が選択的分解性ポリマーとして検討された。これらを組み合わせ、選択的分解性を有し動的/刺激応答性を有するブロックコポリマーを合成し、階層的無機材料創製用の動的なテンプレート(使用後、減圧にするだけで有機物が除去)に用いる。また、様々な刺激応答性ブロックコポリマーを無機材料と組み合わせて、階層構造、自己分解・修復機能、高選択性等を有する「自然調和型有機/無機融合マテリアル」を合成する。 (2) シリカナノ微粒子の創製と配列制御:共同研究による予備検討により、刺激応答性ブロックコポリマーを用いた中空シリカナノ微粒子の創製、シリカナノ微粒子の環状配列制御の可能性が示された。そこで、ブロックコポリマーの様々な構造制御を行うこと等により、前者からは中空ナノ微粒子の中空部や微粒子全体の形態・サイズの制御、後者からは微粒子からなるナノリングの精密合成および環の大きさの制御、ナノリングの階層的集合を検討する。 (3) 融合プロセスにより創製した酸化鉄を用いた新しい重合反応:現時点で重合活性や立体規則性に大きな特徴は見られなかった。そこで、これまでと異なる手法により構造の違った酸化鉄を創製し、その構造の変化が重合挙動へ及ぼす影響を検討する。 (計画全体について) 本研究課題は、研究計画調書の計画に沿って進んでおり、研究目的、計画・方法、研究経費等に大きな変更は必要ない。また変更ではないが、今回の研究計画と同時に進める内容として、中間評価において本研究をさらに展開するためにいただいたアドバイスに従い、有機/無機材料の界面における構造解析も専門分野の研究者と共同研究する予定である。
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