2012 Fiscal Year Annual Research Report
Creative Development of Fusion Materials from Organized Structures of Inorganic Components in Biominerals
Project Area | Fusion Materials: Creative Development of Materials and Exploration of Their Function through Molecular Control |
Project/Area Number |
22107007
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大槻 主税 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00243048)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ハイブリッド材料 / 融合マテリアル / セラミックス / 機能性高分子 / 生体材料 / ヒドロキシアパタイト / バイオミネラル / 擬似体液 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨や歯といったバイオミネラルは、しなやかで高強度な構造を持ちながら、周囲の環境に応答して、分解と再構築が繰り返される機能を有する環境応答材料である。本研究は、バイオミネラル作る巧みな無機/有機融合構造を規範にして、有機高分子のテンプレートに水酸アパタイト(ヒドロキシアパタイト; HAp)や炭酸カルシウム、酸化チタン(チタニア)、酸化鉄などの無機結晶を階層的に複合化したハイブリッド材料の構築するプロセスの確立を目指している。 本年度においては、生成する無機結晶のリン酸カルシウムの種類を拡張するとともに、酸化鉄、酸化チタンを基材として用いるため、それら基材の合成条件と体液模倣環境におけるリン酸カルシウム形成を調べた。酸化チタンについては、ケイ素やアルミニウムの添加により、リン酸カルシウムの形成が著しく抑制されることを見出した。さらに初期の表面状態を調べた結果から、酸化チタン表面でのリン酸カルシウム形成の誘導が、初期の表面電位とともにヒドロキシ基の含有量に依存することを明らかにした。また、酸化鉄であるマグネタイトについて、体液模倣環境でリン酸カルシウムを形成し得る合成法が明らかになった。これらの基材を利用することで、酸化物が複合化した材料がバイオミメティック環境で構築できると考えられる。さらに、酸化ケイ素を水溶液環境で合成する際に、ポリアクリル酸ナトリウムやポリアリルアミン塩酸塩の添加が与える影響についても調べ、バイオミメティックな無機/有機複合構造の構築する条件を検討した。テトラエトキシシランの加水分解、脱水縮重合を利用するゾル-ゲル合成過程に、ポリアリルアミン塩酸塩を共存させることで球形粒子が容易に合成できた。球形粒子の形成は、等量の官能基を有するポリアクリル酸ナトリウムを添加すると抑制され、不定形の粒子として酸化ケイ素が生成することも見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基板となる無機固体の合成を進めるとともに、水溶液中での有機分子を用いた無機結晶の形態や生成位置の制御、高分子や無機固体をテンプレートやリン酸カルシウム結晶の形成や酸化ケイ素の形態制御に関する基礎的な条件を解明している。無機/有機融合構造の構築に必要となるプロセスについて、それぞれのモデルを想定することにより知見を積み重ねている。 平成24年度までの主な成果として、(1) 温度応答性を持つ多糖ゲル表面でのリン酸カルシウム形成、(2) 水和ゲルを反応場に用いる無機/有機融合構造の構築、(3) リン酸カルシウム系基材の微構造制御、(4) ジカルボン酸で修飾されたリン酸八カルシウムの合成が上げられる。これらは、リン酸カルシウム系基材などのカルシウム含有化合物を基材に用いた合成プロセスの確立に寄与すると考えられる。この基盤技術を利用すれば、温度応答型の無機/有機融合マテリアルの構築につなげることができるとともに、pHや機械的応力の変動にも応答するような動的機能を持つ材料の創製にも重要な知見を与えることができる。 次年度以降も引き続きこの解析手法を利用しながら、融合構造の構築に関わる知見を収集する。さらに、単純化したモデルとなっている各々のプロセスを複合化して融合構造の構築プロセスを確立する予定である。平成24年度の結果により明らかになった酸化ケイ素、酸化鉄、酸化チタンに関する知見についても、さらに複雑にしたプロセスに拡張して、複雑な形態を構築するための条件の探索が必要である。得られるハイブリッド材料の応用として、新しい機能を持つ人工骨や人工歯などのバイオメディカル分野への利用を検討し、環境応答型バイオマテリアルの開発も進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
無機/有機複合構造について、バイオミメティック環境を利用したプロセスで構築するための知見を収集している。材料を構築するプロセスをモデル化する手法で、順調に基礎的な知見を得ている。これまでのところリン酸カルシウムを主体にした構造構築に関して順調に知見を得ている。また、酸化ケイ素の形態制御や、酸化鉄および酸化チタンを基材に用いたバイオミメティック環境での反応について、基礎的な情報を得ている。平成25年度以降も、この解析手法をさらに推進し、より多様な無機化合物や有機分子へと取り扱いを拡張する。無機化合物としては、ケイ酸カルシウムやチタン酸バリウムなどの複雑な組成の化合物へと展開を図りながら、知見の収集を進める。さらにこれまで得られている各々の合成プロセスを複合化した構造構築プロセスの確立へと展開を図る予定である。より多様となる化合物の取り扱いや、複雑な構築プロセスの検討については、今後も領域内での計画研究や公募研究の研究者との共同研究を積極的に進めることにより解決を図る。温度やpHといった刺激応答性分子の導入により外部環境の変動を利用した複合化を試み解決を図る。それらの取り組みにより、従来のバイオミネラルの機能を超えるハイブリッド材料を創製する。 応用面に関しては、これまでに蓄積した知見に基づきながら、動的機能を持つ人工骨や人工歯といった新しい機能を持つ材料を得て、バイオメディカル分野への展開を進める。特に動的機能を与える分子として、ペプチドの利用を進めるための共同研究の体制を作り上げる。そのペプチドを利用した無機/有機融合構造により、バイオメディカル分野での安全性と機能性の両立を図りながら、新しい機能として環境応答性を発現するバイオマテリアルを展望して研究を進める。
|
Research Products
(47 results)