2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Fusion Materials: Creative Development of Materials and Exploration of Their Function through Molecular Control |
Project/Area Number |
22107011
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
片桐 清文 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30432248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 恒之 東海大学, 理学部, 講師 (00419235)
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Keywords | ハイブリッド材料 / 機能性高分子 / 融合マテリアル / 自己組織化 / ナノバイオ |
Research Abstract |
1. 分子制御に基づくアップコンバージョン(UPC)ナノ粒子の開発 量子ドット等の蛍光ナノ粒子はバイオイメージング等の分野で応用が期待されており、盛んに研究されているが、励起光源として生体組織への透過性が低い紫外光を用いている点など課題も多い。これに対し、生体組織への透過性が高い近赤外光を励起光源とするアップコンバージョン(UPC)蛍光体が注目を集めている。昨年度までに液相プロセスでUPC蛍光ナノ粒子を合成し、これを脂質膜で修飾することにより、水系溶媒に対して安定に分散可能なUPC蛍光ナノ粒子の合成に成功している。本年度は複合化に用いる脂質の種類によって粒子の表面電荷等を制御し、特定の表面に吸着する性質を付与することに成功した。またフッ素を含まない、酸化物UPC蛍光体の蛍光増強についても検討した。 2. 分子制御融合プロセスによる二酸化チタン構造構築と新機能開拓 TiO2は優れた光触媒として知られている。A01班垣花グループと共同で開発したグリコール酸Ti錯体を用いることで合成が困難なブルカイトおよびブロンズの単相合成に成功した。ポリスチレン(PS)粒子にグリコール酸チタン錯体とカチオン性ポリマーを交互積層法によってコーティングし、PSコアを溶解除去後に水熱処理することで中空ブルカイト粒子を作製した。錯体によってミクロな結晶多形の構造を制御し、同時に交互積層法によってマクロな中空構造を付与することに成功した。ブロンズ型TiO2ナノ粒子をメタノールに分散し、ガラス基板へスピンコート後、500℃で加熱することでブロンズ薄膜を作製した。このブロンズ薄膜はUV光照射によって親水化し、さらに暗所でもその高い親水状態が保持されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画では、具体的な項目として、まず「分子制御に基づくアップコンバージョン(UPC)ナノ粒子の開発」に取り組んだ。研究代表者は、水系溶媒に安定に分散するUPC蛍光体として表面が疎水基で被覆されたUPC蛍光ナノ粒子に脂質を複合化することで、水分散性、生体適合性を付与するとともに、表面電荷など粒子表面の特性をコントロールし、特定の表面に選択的に吸着する機能を導入することに成功した。これは、ガン組織などに集積化し、イメージング等をすることを想定した場合、不可欠な機能である。この複合体を近赤外光による光線力学的療法へ応用するため、複合体の疎水場に光感受性物質を導入する検討にすでにはいっており、計画は予定通り達成されている。当初の研究計画に関しては、平成22年度の実施した「外部からのシグナルに応答して内包物を放出するドラッグ・デリバリー用のハイブリッドカプセル」も当初の予定通りに成果を挙げることが出来ている。次に領域内での共同研究として、A01班垣花グループとの共同研究で、水溶性チタン錯体の交互積層により、ブルカイト型二酸化チタン中空粒子の合成に世界で初めて成功した。さらにブロンズ型酸化チタンナノ粒子から作製した薄膜が従来の酸化チタン薄膜と比較して、極めて優れた超親水化特性を有することも見出した。このように、当初研究計画には挙げていなかった研究についても、領域全体会議等における計画研究・公募研究に参画する研究者とのディスカッションに基づいて共同研究を実施し、すでに多くの成果をあげることに成功している。これらから総合的には判断して、研究課題全体として当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は研究計画調書に記載された計画を極めて順調に達成しており、研究計画・方法、設備及び主な研究経費等について大きな変更は必要としていない。平成24年度においては、当初より計画している研究トピックのうち、UPC蛍光ナノ粒子を用いたバイオメディカル応用に関しては、平成23年度までに開発に成功した、UPC蛍光ナノ粒子-脂質複合体に光感受性物質の導入を試みる。近赤外光をこの複合体に照射することで、UPC蛍光ナノ粒子が励起し、そこから光感受性物質にエネルギーを受け渡すことによって一重項酸素が生成することが期待されるので、その機能評価を中心に行っていく。また、これまでに領域内の共同研究を通じて、当初の計画以上の成果を挙げることができていることから、今後も計画研究ならびに公募研究の研究者との共同研究を積極的に推進する予定である。そのため、当初の計画は着実に履行しつつ、共同研究等でより優れた成果が期待できる場合には、その研究に注力できるように弾力的に計画・設備等を運用していく予定である。すでに領域会議を通じてA03班佐々木グループと多糖ナノゲルと無機ナノ粒子を複合化し、バイオメディカル応用に用いる共同研究を実施することになったので、平成24年度はそのトピックにも積極的に取り組んでいくほか、さらなる共同研究の可能性を模索する。また、アウトリーチ活動についても、様々な機会を利用して積極的に実施する。
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