2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖転移酵素を基盤とする抗生物質生合成マシナリー多様性創出機構の解明
Project Area | Biosynthetic machinery: Deciphering and regulating the system for bioactive metabolite diversification |
Project/Area Number |
22108003
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
江口 正 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (60201365)
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Keywords | 生合成 / 抗生物質 / 二次代謝物 / 生合成酵素 / 遺伝子クラスター |
Research Abstract |
本研究では、特徴ある化学構造と有用な生理活性を持つ微生物が産生する二次代謝産物に焦点を絞り、それらの生合成系を遺伝子・酵素レベルで精密に解析することを目的とし、放線菌の生産するポリケチド抗生物質ビセニスタチンおよびアミノ配糖体抗生物質であるカナマイシンの生合成遺伝子の機能解析を行った。 ビセニスタチンはStreptomyces halstedii HC34から単離された抗腫瘍性20員環マクロラクタム抗生物質である。ビセニスタチンのアグリコンは、特徴的なアミノ酸とポリケチド鎖が連結して構築すると考えられ、生合成工学的手法により新たな分子創製も可能になると期待された。ビセニスタチンのスターター生合成に関しては、vinクラスターの中央部に位置する特徴的な8つの生合成酵素VinH,I,J,K,L,M,N,Oが関与すると推定された。そこで遺伝子破壊実験で機能解析を行ったVinH, Iを除く6つの遺伝子について、異種発現を行い、in vitroの実験によりそれらの機能を解明した。すなわち、グルタミン酸から3-メチルアスパラギン酸を経てポリケチド合成酵素にロードされるビセニスタチンのスターター部位構築機構を明らかにした。 カナマイシンはStreptomyces kanamyceticusが生産する最も有名なアミノ配糖体抗生物質である。本年度は、カナマシンの生合成の最終段階に関わるα-ケトグルタル酸依存型ジオキシゲナーゼおよびNADPH依存型の脱水素酵素の機能を明らかにした。これら酵素はカナマイシン生合成遺伝子クラスターに特異的に含まれる酵素遺伝子であり、これらの酵素は脱アミノ化、引き続くケトン基から水酸基の還元を行い、カナマシンBからカナマシンAへの変換に機能していることが分かった。これにより、これまで不明であったカナマイシン生合成の全貌を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であるマクロラクタム抗生物質およびアミノ配糖体抗生物質の生合成遺伝子の機能解析については、順調に進んでいる。また、新たな研究対象としているマクロラクタム配糖体抗生物質であるがんの転移阻害剤インセドニン及び抗菌抗生物質クレミマイシンの生合成遺伝子クラスターは既に取得し、現在、解析を進めておいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アミノ配糖体抗生物質の生合成遺伝子の機能解析をさらに進めて、それらの基質特異性の解明へと進めていく予定である。さらにこれらの酵素を組み合わせて、新規抗生物質の創成にも取り組む。マクロラクタム配糖体抗生物質に関しては、インセドニンおよびクレミマイシンの生合成クラスターの解析を進めると共にそれらの機能解析を進めていく。さらにこれまでに解明したマクロラクタム配糖体抗生物質であるビセニスタチンとの共通性、特異性を明らかにし、非天然型化合物構築への新規アプローチを開拓する。これらを迅速に行うには、生合成酵素の効率的な発現系の構築が必須であり、これまでの大腸菌での異種発現系では、うまくいかないことが見られた。そのため、今後は放線菌での発現系も取得し、構築していく予定である。
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