2011 Fiscal Year Annual Research Report
構造共鳴を利用したテラヘルツ波メタマテリアルの作製と機能
Project Area | Electromagnetic Metamaterials |
Project/Area Number |
22109003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
萩行 正憲 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (10144429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 正也 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (30343239)
宮丸 文章 信州大学, 理学部, 准教授 (20419005)
宮嵜 博司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00134007)
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Keywords | メタマテリアル / テラヘルツ波 / 超微細インクジェットプリンタ / 誘電体メタマテリアル / 液体メタマテリアル / アクティブメタマテリアル / 光伝導アンテナ / 立体メタマテリアル |
Research Abstract |
超微細インクジェットプリンタを用いて、半導体基板上に平面、立体、および、多層メタマテリアルを作製する技術を確立した。立体メタマテリアルでは、シリコン基板上に立ち上がったU字型のメタマテリアルを作製し、テラヘルツ波の磁場がU字面を貫く場合の磁気応答を確認した。TiO2系微小球をベンゼン中に分散し、スターラーで撹拌することにより、「液体メタマテリアル」を創製した。TiO2球のミー共鳴に伴う透磁率の1からのずれが観測された。また、Electro Fine Forming(EFF)法で金属分割リング共振器を大量に作製し、これを基板に展開することにより平面ランダムメタマテリアルを作製した。濃度が薄いため、透過ディップは小さいが、LC共鳴によるディップが観測された。これらの手法は、テラヘルツ領域での3次元等方的バルクメタマテリアルの作製法としてユニークなものである。 金属メッシュ上には疑似プラズモン-ボラリトンが存在することが知られているが、金属メッシュの構造によりその分散関係が制御できることを示した。 デバイス応用のひとつとして、テラヘルツ波放射用のGaAs光伝導アンテナに、分割リング共振器を装荷し、放射スペクトルと偏光特性が分割リング共振器の位置や向きによって制御可能であることを示した。さらに、分割リンク共振器のギャップ部を光パルスで照射することにより、放射スペクトルをダイナミックに変調できることも示した。 メタマテリアルを評価する装置として、エルプソメトリー分光装置ならびに近接場顕微鏡を作製した。また、ラマン散乱過程を抑えることにより高強度のテラヘルツ波発生に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バルクおよび平面メタマテリアルの作製に向けて、順調に研究が進展している。テラヘルツ領域では、メタ原子の大きさが数十ミクロンであるため、様々な作製法が使用でき、また、試料の大きさも5ミリ角程度と扱いやすい。当計画研究では、超微細インクジェットプリンタを世界に先駆けてメタマテリアル作製に応用するとともに、レーザー加工、誘電体セラミック加工、Electro Fine Formingなど様々な手法を作製に導入している。これらの中には研究計画調書には書かれていなかったものもあり、その意味では予想以上の展開が見られた部分もある。ただ、負の屈折率の実現という意味では、最終的な測定による評価にまでは至っていない。これらは、プロジェクトの後半で達成する予定である。 震災の影響を受けた石原班のメンバーを研究室に迎えて、光伝導アンテナに卍型構造を付加したテラヘルツ波放射素子の作製や、田中班とのバイオテンプレートを活用したメタマテリアルの作製など、他班との連携協力も進みつつある。海外との連携では、学振の二国間共同研究を利用して、ロシアのニジニ・ノブゴロド大との間でメタマテリアルに関する共同研究を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元バルクメタマテリアルの作製は、通常の材料との比較という意味では重要であるが、実際の応用という場面では、2次元(平面)メタマテリアルがより重要であるという認識が、世界的には強まっているように感じられる。これは、構成材料の損失がバルクメタマテリアルでは無視できないからである。テラヘルツ波領域では、光領域に比べて損失の影響は格段に小さいといえども、メタ原子の共振を使う場合には、現実の応用には非常に問題となる。本研究においては、3次元バルクメタマテリアルの作製がひとつの大きな課題であるが、できるだけ低損失のバルクメタマテリアルの開発を進める一方、将来のテラヘルツ用の実用素子のためには、2次元あるいは準2次元メタマテリアルにより注力すべきであると考える。このため、金属メッシュ構造を基本に、平面カイラル構造やチェッカーボードパターンにおける低次元波とその透過スペクトルへの影響についての研究をより深めることが大切であると考えられる。また、これまでの単純な金属を材料としたメタマテリアルだけでなく、興味深い物性を有するカーボン系ナノ材料やVO2などの金属-絶縁体転移を起こすような物質を構成材料とするメタマテリアルへの展開も必要である。
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Research Products
(34 results)