2011 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害・変性疾患のシナプスダイナミックパソロジーの解明
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
22110002
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡澤 均 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50261996)
|
Keywords | 発達障害 / 神経変性 / シナプス / 分子イメージング / 病態 |
Research Abstract |
PQBP1遺伝子変異による遺伝性精神遅滞は、脆弱X症候群、レット症候群に次ぐ頻度の高い重要な疾患であることが示されている。PQBP1がシナプス分子NR1を制御することが大人の学習障害の原因であることを示した。さらに、PQBP1病の小頭症のメカニズムについて研究を行う為にconditional knock out(cKO)マウスを作成した。Nestin-Crec KOマウスは期待通り小頭症を示し、ヒト小頭症に対応して大脳皮質構造に大きな変化を伴わないものであった。分子メカニズムについては詳細を既に明らかにしているが、論文が投稿中であるため詳細は述べない。変性疾患についても、シナプス病態につながる新たな成果を得た。すなわち、脊髄小脳変性症7型原因遺伝子Ataxin-7の新しい機能を発見した。Ataxin-7は核においてhistone acetyltransferase活性を持つ分子とともにSTAGA,PCNF/GCN5複合体の構成要素であることが知られている。これらの核タンパク複合体は酵母SAGA複合体のホモログであり、SAGA複合体と同様に、histoneからのゲノムDNAの解きほぐしを行うクロマチンリモデリング複合体である。従って、脊髄小脳変性症7型病態は、変異タンパク質によってクロマチンリモデリング障害が生じて、小脳神経細胞や網膜神経細胞の機能と生存維持に必要な遺伝子群の発現が低下して症状につながると考えられて来た。私たちはAtaxin-7蛍光融合タンパクを作成し、分子イメージングで観察したところ、Ataxin-7は核だけでなく細胞質にも行き来していることが分かった。さらに抗体で内在性のAtaxin-7を染色しても分裂前後の細胞では細胞質に細胞骨格様の染色が認められた。そこで微小管との結合を疑いalpha-tubulinとの結合を免疫沈降法で確認した。過剰発現、ノックダウンで細胞骨格の安定性が変化することから、両者の結合は細胞骨格を保ち、凝集により細胞質Ataxin-7が不足すると神経細胞の細胞骨格不安定化につながることが示された。さらに、Ku70のハンチントン病治療効果もハエモデルを使って確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
発達障害としてメジャーな疾患であることが確立されて来たPQBP1の学習障害と小頭症の分子メカニズムをほぼ解明した。前者はPQBP1変異がNMDA受容体の発現低下につながって学習が困難になるというもので、シナプス病態の典型である(J Neurosci2010)。後者は論文投稿中であるがトップジャーナルのピアレビューを受けている。これらは、次にマウスを用いた治療実験へと進めることが出来る。さらに、変性疾患においては、核内タンパクと考えられて来たAtaxin-7が細胞質で細胞骨格安定化に作用することを発見した(Hum Mol Genet2012)。これは核から神経突起安定性へつなぐもので、細胞骨格安定性はアルツハイマー病を含む多くの変性疾患で疑われる共通病態でもある。グリア細胞による変性機序も従来如何なる分子が関与するか分かっていなかったが、バーグマングリアのニューロン保護作用を担う新規分子Maxerを発見した(EMBO J 2010)。さらにKu70を用いたハンチントン病治療がマウスとショウジョウバエでコンファームされ(J Cen Biol 2010;PLoS ONE 2011)、治療開発のターゲットであることを確信できた。現在は薬剤とウィルスベクターを用いた分子標的治療開発が進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
優秀な若手研究者をリクルートして育てることが最大の課題である。若手研究者の一部は従来の日本人研究者と同様に勤勉であるが、大多数は長時間や過密な労働を嫌うようになっている。彼らをどのように活性化して育てていくかに苦心している。研究計画が実現するかは若手研究者にかかっている。方策としては、論文化の作業を共同して行い成功体験を共有すること、多くの国際的研究に触れさせること(Harvard Univ,Max-Planck Institueなどの共同研究者とのメールやインターネット会議に参加させるなど)を行っており、5年間の短い期間であるが、成長を期待している。
|
Research Products
(20 results)
-
[Journal Article] Ataxin-7 associates with microtubules and stabilizes the cytoskeletal network2012
Author(s)
Nakamura, Y., Tagawa, K., Oka, T., Sasabe, T., Ito, H., Shiwaku, H., La Spada, A.R., Okazawa, H.
-
Journal Title
Hum Mol Genet
Volume: 21(5)
Pages: 1099-1110
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] The solution model of the intrinsically disordered polyglutamine tract binding protein-1 (PQBP-1)2012
Author(s)
Ress, M., Gorba, C., Gorba, C., de Chiara, C., Bui, T.T.T., Garcia-Maya, M., Drake, A.F., Okazawa, H., Pastre, A., Svergun, D., Chen, Y.W.
-
Journal Title
Biophys J
Volume: (in press)
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Ku70 alleviates neurodegeneration in Drosophila models of Huntington's disease2011
Author(s)
Tamura, T., Sone, M., Iwatsubo, T., Tagawa, K., Wanker, E.E., Okazawa, H.
-
Journal Title
PLoS One
Volume: 6
Pages: e27408
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-