2012 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of dynamic pathologies of developmental and neurodegenerative diseases
Project Area | Generation of synapse-neurocircuit pathology |
Project/Area Number |
22110002
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡澤 均 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50261996)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 発達障害 / 神経変性疾患 / PQBP1 / シナプス / ポリグルタミン病 / 微小管 / TERA / VCP |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害についてはPqbp1遺伝子の2種類のcKOマウスを作成し、nestin-CreによるcKOマウスマウスの小頭症メカニズムあるいはsynapsin1-CreによるcKOマウスのシナプス障害について解析を行った。PQBP1タンパク質はスプライシング複合体の構成成分の一つであり、その欠失は様々なタンパク質の発現に影響を与える。その中には細胞周期に関与するタンパク質あるいはシナプス構成成分のタンパク質があり、これらの発現パターンの変化に基づいて、小頭症あるいは精神遅滞症状が生まれることが明らかになってきた。一方、変性疾患については、ポリグルタミン病の一つ脊髄小脳変性症7型の原因タンパク質Ataxin-7の新たな機能とそれを介した病態を明らかにした。すなわち、Ataxin-7はチューブリンと結合して微小管安定化に貢献する。病態においては、変異Ataxin-7の動きが制限されて、微小管が不安定化する。これは、樹状突起の形態的変化の背景にもあると考えられる。さらに、別の新たな病態も明らかにした。Ataxin-1, Ataxin-7, Androgen receptor, Huntingtinなどの多数のポリグルタミン病タンパク質とTERA/VCP/p97が結合することが明らかになった。前述の例と同様に、変異ポリグルタミン病タンパク質の動きの悪さに引きずられて、TERA/VCP/p97の細胞内動態が妨げられる。これによって、神経細胞の核内部でのDNA損傷修復におけるTERA/VCP/p97の機能も低下することになる。結果として、多数のポリグルタミン病で共通してDNA損傷修復障害が起きており、これが神経細胞の全体的な機能障害につながっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は発達障害および変性疾患におけるシナプス障害を2光子顕微鏡等の新たな技術を用いて明らかにすることにある。これまでに、頻度の高い発達障害原因遺伝子であるPQBP1の病態を解明するために、Pqbp1遺伝子の2種類のcKOマウスを作成し、nestin-CreによるcKOマウスマウスの小頭症メカニズムあるいはsynapsin1-CreによるcKOマウスのシナプス障害について解析を行った。既に、ターゲットとなる遺伝子は同定しており、メカニズムの大半は明らかになっている。今後、これらの仮説の証明をより確実にした後に、国際科学誌に公表する予定である。2光子顕微鏡を用いて、cKOマウスのシナプス形態異常も既に捉えている。 一方、変性疾患においては、ポリグルタミン病を中心に、シナプス病態につながるまでの細胞病態を明らかにして来た。それには、Ku70機能障害を介したDNA損傷修復障害、TERA/VCP/p97機能障害を介したDNA損傷修復障害、Ataxin-7変異タンパク質の細胞骨格不安定化が含まれる。また、未発表であるがHMGB1についても結果を得つつある。重要なポイントは、疾患タンパクが複数のターゲットタンパク質との結合を介して、DNA損傷修復障害を起こすことがポリグルタミン病の共通病態であることを、複数の研究成果が示している点である。今後、さらに他の変性疾患グループでも同様な病態を証明することが出来るのではないかと考えている。さらに、もう一つの重要な成果として、これらのタンパク質を用いて、モデルマウス、モデルショウジョウバエに対する顕著な治療効果を得ていることがある。進行中であるが、2光子顕微鏡を用いてのポリグルタミン病ノックインマウスのシナプス形態異常も捉えている。 これらの成果を勘案すると、本研究は計画通り順調に進行しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はこれまで順調に進行して来ている。計画の変更の必要性はない。一方、研究を実施する効率には問題点を感じており、若手研究者を如何に育成するかは、本研究に特異的な問題点ではないものの、重要な点と考えている。プロジェクトの効率的進行と、若手研究者の個人の成長を、両立することはかなり難しい。特定の個人に全てを任せた場合には、様々な理由で実験の進行が遅れることがしばしばである。若手研究者のプロジェクトの全体的意義への理解を深めるとともに、個々の成果の達成感を育て、成果に基づくプロモーションのローリングモデルを与えることも必要と考えている。
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Research Products
(28 results)